セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR12:

メサラジン製剤で急性心筋炎、胸膜炎を発症したと考えられた潰瘍性大腸炎の1例

演者 塚野 航介(島根県立中央病院 消化器科)
共同演者 宮岡 洋一(内視鏡科), 中瀬 真実(島根県立中央病院 消化器科), 上野 さや香(島根県立中央病院 消化器科), 泉 大輔(島根県立中央病院 消化器科), 矢崎 友隆(島根県立中央病院 消化器科), 山之内 智志(島根県立中央病院 消化器科), 園山 隆之(島根県立中央病院 消化器科), 伊藤 聡子(島根県立中央病院 消化器科), 藤代 浩史(内視鏡科), 高下 成明(島根県立中央病院 消化器科), 今岡 友紀(島根県立中央病院 消化器科)
抄録 メサラジンは潰瘍性大腸炎治療の重要な治療薬であり,比較的副作用も少ない.しかしながら,稀に呼吸・循環器系への重篤な副作用の報告もある.今回,メサラジン製剤により急性心筋炎を呈し,剤型変更での投与で胸膜炎を呈したと考えられた症例を経験した為,文献的考察も加え,報告する.
症例は26歳男性.2010年5月,23歳時に全大腸炎型潰瘍性大腸炎を発症した.中等症であり,経口ならびに経腸メサラジン製剤,ステロイド内服での加療を開始した.症状改善傾向であったが,第11病日から38-39度台の発熱があり,潰瘍性大腸炎悪化を疑い,ステロイド増量,抗生剤併用,白血球除去療法を開始した.第18病日から胸部痛が出現し,胸レントゲンで心拡大,心臓超音波で収縮力低下を認めた.メサラジンによる急性心筋炎が疑われ,第19病日から投与中止した.血液培養は陰性であったが,血中β-D-グルカン上昇しており,抗真菌剤も併用した.その後,症状は改善し,第28病日の心臓超音波では心収縮力は改善していた.以後、潰瘍性大腸炎に対しては,メサラジンは投与せず,ステロイド、白血球除去療法、アザチオプリンなどで治療継続し,寛解導入となった.25歳時に再燃を来し,ステロイド再投与で改善傾向となるが,減量で再燃をきたすようになった.ステロイド依存性と考えられ,治療強化が望まれた.インフリキシマブやタクロリムスも検討したが,重症度が軽症であり,過度な治療になると思われた.2種類のメサラジンのリンパ球幼若化試験は陰性であり,本人へ十分なインフォームドコンセントを施行したうえで,以前とは異なる剤型のメサラジンを2012年8月から入院の上,投与した.投与3日目に胸部違和感を訴えられるも諸検査では異常なく,症状改善したため,継続投与としたが,再度症状出現と炎症反応も上昇したため,5日目に中止した.その後,症状、炎症反応ともに速やかに改善した.心機能低下は認められず,メサラジンによる胸膜炎の可能性が高いと考えた.現在,アザチオプリンのみで寛解維持状態である.
索引用語 潰瘍性大腸炎, メサラジン