セッション情報 一般演題

タイトル 60:

Telaprevir/PEG-IFN/RBV療法施行中に急性膵炎を発症したC型肝硬変の1例

演者 藤野 初江(広島大学病院 消化器・代謝内科)
共同演者 今村 道雄(広島大学病院 消化器・代謝内科), 菅 宏美(広島大学病院 消化器・代謝内科), 福原 崇之(広島大学病院 消化器・代謝内科), 苗代 典昭(広島大学病院 消化器・代謝内科), 本田 洋士(広島大学病院 消化器・代謝内科), 宮木 大輔(広島大学病院 消化器・代謝内科), 河岡 友和(広島大学病院 消化器・代謝内科), 柘植 雅貴(広島大学病院 消化器・代謝内科), 平松 憲(広島大学病院 消化器・代謝内科), 兵庫 秀幸(広島大学病院 消化器・代謝内科), 川上 由育(広島大学病院 消化器・代謝内科), 相方 浩(広島大学病院 消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院 消化器・代謝内科)
抄録 【症例】47歳男性,C型肝硬変.HCVはgenotype 1b型高ウイルス,IL28B TT.以前は大酒家だったが、最近は禁酒できていた。【現病歴】39歳時にPEG-IFN/RBV療法を施行され,治療中に血中HCVは陰性化したが終了後再燃し,以後,肝庇護療法にて加療されていた.血小板数8万/µLと低値であり,201X年2月に摘脾術を施行された.血小板数は20万/µLと増加し,同年5月よりTelaprevir (TVR)/PEG-IFN/RBV療法を導入された.治療開始4週目には血中HCV陰性となったが,開始6週目,心窩部痛が出現,次第に増悪したため精査加療のため治療開始7週目に入院した.P-Amy 1,594 U/L,BUN 20.7 mg/dl,Cr 1.9 mg/dL,LDH 308 U/Lと上昇,CTにて膵全体の腫大および周囲脂肪濃度の上昇を認め,急性膵炎と診断した.炎症の膵外進展度は前腎傍腔までであり,予後因子0点,膵炎重症度は軽症と判定された.TVR/PEG-IFN/RBVの3剤すべてを中止し,絶食,補液,蛋白分解酵素阻害薬を投与した.症状は次第に改善し,CrおよびP-Amy値も低下した.薬剤性の膵炎が疑われたが,血中HCVが陰性化していること,以前のPEG-IFN/RBVでは膵炎は生じなかったことから,入院4 日後よりPEG-IFN/RBVのみ再開した.膵炎の再発を認めず,入院20日目にERCPを施行した.主乳頭からの造影では馬尾状の膵管がわずかに描出されるのみであったが副乳頭からの造影では背側膵管が尾部まで描出され、膵管癒合不全と診断された.膵管には広狭不整等の明らかな異常所見は認められなかった.退院後もPEG-IFN/RBVを継続しているが膵炎の再燃なく血中HCV陰性のまま経過している.【考察】膵管癒合不全に合併する膵炎は,副乳頭の閉塞因子と後天性の負荷因子の相互作用により発症すると考えられている.薬剤性膵炎の可能性については,TVR/PEG-IFN/RBV療法にて膵炎発症の報告があること,PEG-IFN/RBV再開後も膵炎を発症していないことから,本症例はTVRにより膵炎が誘発された可能性がある.【結語】本症例の急性膵炎発症には,薬剤,膵管癒合不全,過去の大酒などの関与が考えられ,文献的考察を加えて報告する.
索引用語 3剤併用療法, Telaprevir