セッション情報 一般演題

タイトル 56:

急性肝炎にて発症したPBC-AIHオーバーラップ症候群の1例

演者 八杉 晶子(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科)
共同演者 長谷川 亮介(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科), 佐々木 宏樹(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科), 生田 幸広(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科), 宮石 浩人(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科), 岡本 英司(独立行政法人国立病院機構 浜田医療センター 消化器内科)
抄録 患者は60歳代女性。生活歴は飲酒ビール350ml/日、喫煙なし。海外渡航なし。既往歴は高血圧、脂質異常症にてアムロジピン、プラバスタチンを内服していたがここ数年変更はなかった。これまで肝機能異常を指摘されたことはなかったが、1ヶ月前頃から全身倦怠、発熱を認めるようになり当院受診となった。AST1018IU/l、ALT1148IU/l、ALP2313IU/lと肝機能障害を認め入院となった。肝炎ウイルスマーカーは陰性、抗核抗体80倍、抗ミトコンドリア抗体陰性であった。画像検査ではCT、エコーで肝腫大を認めたが占拠性病変は認めなかった。MRCP検査で総胆管や肝内胆管の拡張は認めなかった。入院後肝庇護加療を開始、肝機能は改善し退院となった。ウルソデオキシコール酸(UDCA)の内服を継続し外来で経過観察し、初診から2ヶ月後ではAST31IU/l、ALT26 IU/lと肝機能は正常化していたが、その1ヶ月後にはAST169IU/l、ALT181IU/lと再上昇した。肝生検の同意を得て肝生検を施行。肝内小型胆管に慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)を認めた。抗ミトコンドリアM2抗体は陰性であったがその他の所見はPBCとして矛盾せず、PBCと診断した。またAIH国際診断基準にてdefiniteAIHでありPBC-AIHオーバーラップ症候群と診断した。UDCAに加えステロイド投与も行い肝機能は現在に至るまで落ち着いている。AIHとPBCはいずれも自己免疫機序が深く関与する代表的な自己免疫性肝疾患であり、PBC-AIHオーバーラップ症候群は自己免疫性肝疾患の8.4%との報告もある。PBCおよびAIHどちらかと診断され経過観察中に他方の所見を来たしオーバーラップ症候群と診断される例もある一方で、複数回の組織学的検討と長期観察では厳密にオーバーラップ症候群である症例は少ない可能性も指摘されている。今回我々は急性肝炎様に発症し、AIH-PBCオーバーラップ症候群と診断した症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 PBC, AIH