セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR06:

潰瘍性大腸炎の急性増悪と鑑別を要し、内視鏡的な経時的変化を観察しえた 5-ASAによる薬剤性腸炎の1例

演者 岩根 康祐(倉敷中央病院 消化器内科)
共同演者 下立 雄一(倉敷中央病院 消化器内科), 久保 京子(倉敷中央病院 消化器内科), 土井 顕(倉敷中央病院 消化器内科), 西村 直之(倉敷中央病院 消化器内科), 藤田 英行(倉敷中央病院 消化器内科), 毛利 裕一(倉敷中央病院 消化器内科), 松枝 和宏(倉敷中央病院 消化器内科), 山本 博(倉敷中央病院 消化器内科)
抄録 5-aminosalichilate (5-ASA)は軽症から中等症の潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)に対する第1選択の標準治療薬である。今回我々は潰瘍性大腸炎の急性増悪と鑑別を要し、内視鏡的な経時的変化を観察しえた 5-ASAによる薬剤性腸炎の1例を経験したので報告する。症例は51歳の男性。半年前から下痢と血便を認めており、さらに健康診断で便潜血反応陽性を指摘されたため当院を受診。下部内視鏡検査の結果から直腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断され、5-ASA(Pentasa)3 g /day内服、1 g /day注腸を開始した。治療開始翌日から腹痛と頻回の水様下痢が出現し、鮮血便も見られたため精査加療目的に当科入院となった。入院時の下部消化管内視鏡検査では下行結腸まで炎症が広がっており、臨床経過から5-ASAのアレルギーが疑われたため5-ASAの中止と抗菌薬加療をおこなった。治療開始から数日すみやかに鮮血便と下痢の改善を認め、下部消化管内視鏡検査を再検したところS状結腸から下行結腸の病変は著明に改善していた。5-ASAに対する薬剤添加リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test: DLST)を行うと強陽性であり、経過と合わせて5-ASAアレルギーと診断した。ステロイド(ベクロメタゾン)注腸製剤で寛解導入に成功し、現在まで寛解維持されている。5-ASAアレルギーは1.49%の潰瘍性大腸炎患者にみられ、時にUCの急性増悪との鑑別が問題となることがあり注意を要する。当院での5-ASAアレルギー症例と文献的考察を含めて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 5-ASAアレルギー