セッション情報 | 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄) |
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タイトル | 45:腸間膜脂肪織炎の1例 |
演者 | 安井 七々子(国立病院機構 福山医療センター) |
共同演者 | 藤田 勲生(国立病院機構 福山医療センター), 表 静馬(国立病院機構 福山医療センター), 上田 祐也(国立病院機構 福山医療センター), 岡本 明子(国立病院機構 福山医療センター), 宮阪 梨華(国立病院機構 福山医療センター), 渡邊 一雄(国立病院機構 福山医療センター), 豊川 達也(国立病院機構 福山医療センター), 村上 敬子(国立病院機構 福山医療センター) |
抄録 | 症例は60歳台男性。20XY年Z月10日より下腹部違和感、腹痛、頻回の下痢を自覚。20日に近医受診し、抗生剤・整腸剤等で加療されたが症状改善せず、28日に精査加療目的に当院入院となった。血液検査で炎症反応上昇を認め、下部消化管内視鏡検査では上部直腸から下行結腸の高度な浮腫状変化・内腔の狭小化を認めた。便培養は陰性、内視鏡下生検の病理組織結果は非特異的炎症であった。CTでは同部に浮腫状壁肥厚、それより近位側の腸管拡張、腸間膜の脂肪織濃度の上昇・血管拡張、腹水貯留を認めた。また、下腸間膜静脈の本幹が同定できなくなっていた。以上より腸間膜脂肪織炎と考え、絶食補液治療を開始した。入院3日目には腹部膨満感を自覚し、腹部レントゲンでイレウスと診断したが、補液治療を継続し、改善した。しかし、その後は自覚症状が改善しないため、プレドニゾロン60mgから投与を開始した。CTでは腸管浮腫の著明な改善は認めなかったが、炎症反応・腹部症状は改善し、プレドニゾロンを漸減しながら、経口摂取開始するも症状の増悪はなく、退院となった。しかし、退院6日後に再び下痢・下腹部痛認め、血液検査・CTより腸間膜脂肪織炎の増悪と診断した。保存的加療での改善は困難と判断し、腹腔鏡補助下人工肛門造設術(横行結腸)を施行した。術中所見では、下行結腸~S状結腸の間膜に炎症所見を認めた。腸間膜脂肪織炎は保存的治療が第一選択であるが、確立された治療法はなく、ステロイド、抗生剤、免疫抑制剤、γ-グロブリン投与等が行われている。症状の悪化・遷延・悪性疾患との鑑別困難例には、手術が選択される。病変は限局的であるため、人工肛門造設術やバイパス手術のみがのぞましいとされるが、高度の繊維化、腸閉塞、再燃を繰り返す例では腸管切除や腫瘤切除の適応になる。今回我々は、ステロイドによる保存的加療により、一時的に改善を認めたものの、結果的に手術となり、治療に難渋した腸間膜脂肪織炎の1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | 腸間膜脂肪織炎, 人工肛門造設 |