セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル 19:

EUS-FNAで診断し得た後腹膜腫瘍の1例

演者 山本 翔太郎(県立広島病院 ローテ研修)
共同演者 山内 理海(県立広島病院 臨床腫瘍科), 篠崎 勝則(県立広島病院 臨床腫瘍科), 小道 大輔(県立広島病院 消化器内科), 桑田 幸央(県立広島病院 消化器内科), 隅岡 正昭(県立広島病院 内視鏡内科), 山田 博康(県立広島病院 消化器内科), 西阪 隆(県立広島病院 臨床研究検査科), 佐々木 なおみ(呉共済病院 病理診断科)
抄録 【症例】58歳、男性。【主訴】腹部膨満、食欲低下。【現病歴】当院初診の2ヶ月前から腹部膨満感が出現、増悪傾向となったため、前医を受診したところ、CTで横隔膜脚の尾側、肝の背側から脊椎の腹側にかけて不整形の腫瘤、腹水がみられた。CT、腹水細胞診からは原発臓器の推定が困難であり、精査加療目的に当科紹介となった。EC junction直下の胃壁から、後腹膜腫瘍に対してEUS-FNAを施行し組織を得た。組織診では細胞質は上皮様で大型の類円形核で、核小体が明瞭であったが、免疫染色で上皮系、メラノーマ、内分泌腫瘍系のマーカーは陰性で、CD3が80%で陽性、一部でCD30陽性であり、ホジキンリンパ腫の鑑別が必要で診断に難渋した。原発不明がんの治療ガイドライン等を参考にしてカルボプラチン+パクリタキセルを選択した。その後、組織標本を再度検討し未分化肉腫と組織診断されたが、カルボプラチン+パクリタキセルで病勢を抑えられていたため同レジメンを継続した。4サイクル目途中に腹水の再出現、LDHの上昇がみられたため病勢増悪と判断した。肉腫の標準治療として、ドキソルビシンを開始したが、まもなく髄膜癌腫症によるものと考えられる症状が出現した。PSが悪く積極的治療は不可能と判断し、ベストサポーティブケアを行った。【考察】軟部腫瘍の多くは四肢に生じるがその他部位でも生じることがある。後腹膜の肉腫は全軟部組織腫瘍の10-15%程度、100万人に2.7人程度と比較的まれである。後腹膜の肉腫と鑑別を要するのは、リンパ腫、原発性胚細胞腫、転移性精巣癌、周囲の臓器由来の腫瘍、Castleman病であるが、本症例において画像所見や血液データからは鑑別困難であり,組織診断が必要であった。CTガイド下等による経皮的生検は解剖学的に困難であり、手術による生検も腹水貯留等を考慮すると創傷治癒が困難であると予想したためEUS-FNAによる生検を行った。未分化肉腫の診断に至り、EUS-FNAが後腹膜腫瘍に対する生検手段として有用であると考えられる。
索引用語 EUS-FNA, 後腹膜腫瘍