抄録 |
症例1; 50才代男性。2-3ヶ月前より右季肋部痛を自覚していた。感冒にて前医受診、腹部超音波で肝右葉に巨大な肝細胞癌を認め紹介となった。血液検査は、Plt 24.2万/μl,T.Bil 0.7mg/dl,Alb 3.5g/dl,HBsAg+, HBV-DNA 6.7logIU/ml, AFP 92500KIU/ml, PIVKA-II 734900mAU/mlであった。腹部dynamicCTでは肝後区域を中心に肝細胞癌を認め、門脈右枝および右下肝静脈へ浸潤を認めた。脈管浸潤を伴う高度進行肝細胞癌にて肝動注療法を計12回施行した。現在1年6ヶ月無再発生存中である。症例2; 70代女性。食道静脈瘤破裂を契機にC型肝硬変として当院加療となり、翌年に肝細胞癌初発を認め、PEITを施行した。その後2回の再発を来たし、TACEおよびPEITを施行した。経過観察のCTにて、後区域を中心に肝細胞癌の再発と門脈右枝に腫瘍栓を認めた。Child-Pugh 5点Aと肝機能は良好であった。門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌にて、肝動注療法を施行。5回投与時に肺野に結節影の出現あり、クリプトコッカス抗原陽性と判明した。このとき、dynamicCTにて肝細胞癌の遺残は認めず、腫瘍マーカーも陰性化し、CRに到達しており、動注療法を中止とした。その後約1年7ヶ月無再発生存中である。症例3; 80才台女性。高血圧で近医加療中に、スクリーニングで行った腹部超音波検査にて肝右葉の腫瘤を認め紹介となった。血液検査はPlt 8.1万/μl, PT 76%,T.Bil 1.1mg/dl, Alb 3.4g/dl,HBsAg/Ab -/-,HBcAb+, HCVAb-,AFP 1540KIU/ml,PIVKA-II 1910mAU/ml であった。腹部dynamicCTでは、肝右葉に肝細胞癌を認め、門脈右枝に腫瘍栓を認めた。計4回の治療でCRに到達し、術後2年6ヶ月で肝不全および大動脈弁狭窄症からの心不全のため永眠されたが、生存中肝細胞癌の再発は認めなかった。結語;脈管侵襲を伴う肝細胞癌は、いまだに予後不良であり、肝細胞癌治療アルゴリズム2010では、Vp1-2では肝切除またはTACE、Vp3-4では肝動注化学療法あるいはソラフェニブとされている。今回我々はVp3と高度の脈管侵襲を伴う肝細胞癌に対し、肝動注化学療法にてCRが得られた3例を経験したので、文献的考察を含め報告する。 |