セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR02:

原発性肝扁平上皮癌が疑われた一例

演者 内川 慎介(中国電力株式会社 中電病院 内科)
共同演者 石飛 朋和(中国電力株式会社 中電病院 内科), 鍋島 由宝(中国電力株式会社 中電病院 内科), 金 宣眞(中国電力株式会社 中電病院 内科), 岩本 俊之(中国電力株式会社 中電病院 病理検査室), 河村 寛(中国電力株式会社 中電病院 内科)
抄録 原発性肝扁平上皮癌は非常にまれであり国内外で20数例、本邦に限れば7例と報告されている。今回、原発性肝扁平上皮癌が疑われた一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】86歳、男性【既往歴】C型肝炎、アルツハイマー型認知症【現病歴】2013年7月老健施設入居時、WBC 11400/μl、CRP 13.7mg/dl、軽度肝障害を認め抗生剤内服開始した。39.4度の発熱を認めたため7月11日当科へ入院した。右季肋部圧痛あり、WBC 11400/μl、Plt 13.9万/μl、PT 54.0%、CRP 13.7mg/dl、軽度肝障害、エコーでは肝右葉に辺縁不明瞭で内部低エコー、造影CTでは被膜に造影効果のある約12cm径の腫瘤を認めた。AFP、PIVKA-2、CEA、SCCは基準値内、CA19-9は1955.5U/mlであった。肝内胆管癌や肝嚢胞腺癌、肝膿瘍を鑑別にあげたが、感染コントロールを考慮し穿刺ドレナージを施行した。穿刺液はほぼ無色透明、嚢胞液様であった。培養陰性、細胞診は壊死物質中に扁平上皮癌成分と考えられる異型細胞を多数認めた。胸腹部CTでは肝外に原発巣病変はなく原発性肝扁平上皮癌が疑われた。認知機能不良の高齢患者であり、対症療法を選択しステロイド内服を開始、第13病日に退院した。第25病日に発熱と意識レベル低下を認め、誤嚥性肺炎、DICが疑われ再入院した。胸腹部単純CTでは、左上下肺に間質性肺炎像を認めた。また肝腫瘍病変は約13cm径に増大傾向であった。抗生剤投与開始したが第28病日に肺炎で死亡した。【考察】原発性肝扁平上皮癌の発生は、胆管上皮細胞や肝細胞からのde novo発生説や、嚢胞などの上皮細胞が慢性炎症により扁平上皮化し癌化するなどの考え方がある。増殖は速く壊死傾向が強いため炎症所見が強いことが多い。さらに周囲臓器へも容易に浸潤し非常に予後不良である。本症例は臨床経過、検査データも矛盾しない結果と考えた。症例数の少なさから、診断方法、治療法などは確立されておらず、今後も症例の集積が必要である。
索引用語 肝扁平上皮癌, 細胞診