セッション情報 | 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄) |
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タイトル | JR16:無症候性空腹時低血糖を示したIGF-2産生巨大肝細胞癌の一例 |
演者 | 高橋 悠(島根大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター) |
共同演者 | 岡 明彦(島根大学 医学部 内科学講座第二), 三上 博信(島根大学 医学部 内科学講座第二), 沖本 英子(島根大学 医学部 内科学講座第二), 楠 龍策(島根大学 医学部 内科学講座第二), 宇野 吾一(島根大学 医学部 内科学講座第二), 川島 耕作(島根大学 医学部 内科学講座第二), 佐藤 秀一(島根大学医学部附属病院 光学医療診療部), 石原 俊治(島根大学 医学部 内科学講座第二), 木下 芳一(島根大学 医学部 内科学講座第二) |
抄録 | 【背景】肝細胞癌の腫瘍随伴症候群として低血糖があり、非ラ氏島細胞腫瘍性低血糖(Non-Islet-cell tumor hypoglycemia:NICTH)として知られている。その原因として腫瘍から異常な大分子量のInsulin growthfactor-2(いわゆるbig IGF-2)が過剰産生されることが報告されている。今回無症候性の空腹時低血糖を示したIGF-2産生肝細胞癌を経験したため若干の考察を交えて報告する。【症例】79歳女性。【主訴】食思不振。【現病歴】2013年3月初旬からの食思不振を主訴に近医受診し、腹部超音波にて肝多発腫瘤を指摘され、腹部造影CTを施行したところ肝両葉に最大17cm大の多発腫瘤を認めた。造影パターン、腫瘍マーカー(AFP134842ng/ml、PIVKA2 2126mAU/ml)、HBV既感染から多発肝細胞癌の診断にて4月初旬に当科紹介入院となった。【既往歴】高血圧症、脊柱管狭窄症。輸血歴なし。【生活歴】飲酒歴なし。【入院時現症】PS=0。意識清明、体温36.4℃、血圧120/64mmHg、脈拍73bpm。結膜に貧血黄疸なし。右上腹部に硬く腫大した肝を4横指触知。【入院後経過】入院後に空腹時血糖44mg/dlと低血糖を認めたが、低血糖症状は認められなかった。24時間持続血糖測定にて空腹時低血糖が著明で、毎朝40mg/dl程度となっていた。各種内分泌学的検査で副腎不全、下垂体前葉機能不全、インスリノーマは否定的であり、またIGF-1が10ng/mlと低値を示したことからNICTHが疑われた。IGF-1の低下と、IGF-2/IGF-1比の上昇がNICTHの患者の診断に有用であるとの報告が有り、血清IGF-2の測定をELISA法で行ったところ、IGF-2/IGF-1比の上昇を認め、NICTHを支持する結果であった。夜間の補食を指導し、低血糖の増悪を認めず、また肝細胞癌についてはソラフェニブを導入した。画像上腫瘍の壊死傾向を認め、AFP値もわずかながら減少を認め、第21病日に退院となった。【考察】本症例のように無症候性の低血糖の可能性もあり、肝細胞癌では血糖を調べる事に意義があると考える。また低血糖が初発症状で悪性腫瘍が発見される報告も有り、原因不明の低血糖を経験した時は悪性腫瘍も鑑別に挙げるべきである。 |
索引用語 | 肝細胞癌, 低血糖 |