セッション情報 一般演題

タイトル 21:

保存的加療にて軽快を認めた孤立性上腸間膜動脈解離の一症例

演者 香田 正晴(国立病院機構 米子医療センター 消化器内科)
共同演者 田本 明弘(国立病院機構 米子医療センター 消化器内科), 松永 佳子(国立病院機構 米子医療センター 消化器内科), 山本 哲夫(国立病院機構 米子医療センター 消化器内科)
抄録 【症例】47歳、男性【主訴】心窩部痛、背部痛【既往歴・家族歴】特記事項無し【生活歴】喫煙歴:20本/日×20年、飲酒歴:日本酒換算4合/日【経過】食事・飲酒をしていたところ、急激に心窩部~背部痛が出現し体動困難となり当院救急外来受診。血圧187/111mmHg、脈拍 84/min整であり、顔面は蒼白、苦悶状であった。心窩部に圧痛を認めるも、弾性軟で反跳痛等は認め無かった。鎮痛のためブチルスコポラミン臭化物や塩酸ペンタゾシン投与するも改善は認めず、腹部単純CT施行するも疼痛の原因は指摘できなかった。そのため血管系疾患を考慮し造影CTを行った結果、上腸間膜動脈(SMA)起始部より腹側に欠損像を認め、SMA解離後の偽腔内血栓形成を認めた。以上から上腸管膜動脈解離に伴う症状と診断した。治療は、解離部より末梢の動脈血流は保たれ、腸管への血流も保持されていたため、絶食および血圧コントロールのみで経過観察する方針とした。入院翌日には腹痛は消失し、第6病日の腹部造影CT検査では血栓化された偽腔の吸収に伴って造影効果を受ける真腔は入院時より拡大し、腸管虚血を示唆する所見は認めなかった。同日より食事再開するも以降に再発は認めず、第15病日退院となり、現在も引き続き外来で経過観察としている。【考察】上腸管膜動脈解離は比較的稀な疾患であるが急性腹症の鑑別疾患として重要であり、発症時の症状も無症状から腸管壊死まで多彩であり、診断は正確な画像診断に頼らざるを得ない。さらに治療も経過観察から抗凝固療法、降圧療法、手術など確立されたものはなく、症状に応じた的確な判断が必要となる。今回、我々は保存的加療が可能であった症例を経験したので文献的考察を加え報告する。
索引用語 急性腹症, 上腸間膜動脈解離