セッション情報 一般演題

タイトル 55:

薬剤性肝障害との鑑別に苦慮した自己免疫性肝炎の一例

演者 三村 憲一(野島病院消化器科)
共同演者 佐々木 修治(野島病院消化器科), 宇奈手 一司(野島病院消化器科), 牧野 正人(野島病院消化器科), 北村 厚(野島病院消化器科), 山本 敏雄(野島病院消化器科)
抄録 症例は56歳男性。平成22年12月の人間ドックの際に軽度な肝障害を指摘されていた。平成23年2月に眼球と皮膚黄染を自覚し他院を受診。高度な肝障害を指摘され当院紹介入院となった。生活歴は焼酎1合毎日。発症の約1か月前から市販の胃薬を服用中。海外渡航歴はない。入院時検査成績はT.Bil 11.39, D.Bil 7.70, AST 1094, AST 1998, ALP 596, GGT 237, PT 92%であった。腹部CTおよび超音波で異常は認めず、各種肝炎ウイルス感染も否定された。また抗DNA抗体のみ低力価陽性である以外自己抗体は陰性であった。このため、薬剤性肝障害の診断基準DDW-J2004に基づきその可能性が高いと考えられた。入院後は原因と考えられる薬剤の中止と補液などにより検査成績は改善し約1か月後に退院となった。退院後も外来で経過観察を続け肝機能が正常化後に終診となっていた。しかし、平成24年5月に再び黄疸を自覚し来院、第2回入院となった。入院時T.Bil 11.84, D.Bil 7.89, AST 1269, ALT 2313, PT 78%であった。今回はアルコールと薬剤の関与が否定され、前回同様に肝炎ウイルスの関与も否定的であった。自己免疫性肝炎国際診断基準スコアからprobable AIHと判定されたため、ステロイドを開始したところ、その後肝障害は速やかに改善していった。治療開始後に肝生検行ったが、リンパ球を主体とした中等度の炎症細胞浸潤や広範な肝細胞変性を認め、自己免疫性肝炎を支持する組織所見であった。【考察】薬剤性肝障害との鑑別に苦慮した非定型的な自己免疫性肝炎の一例を経験した。自己免疫性肝炎の中には血清IgGや自己抗体が陰性となる非定型的な症例があるが、治療が遅れると肝不全に至ることもあり注意が必要である。
索引用語 自己免疫性肝炎, 薬剤性肝障害