セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR08:

外科的切除を行った虫垂重積症の2例

演者 松木 由佳子(松江市立病院)
共同演者 河野 通盛(松江市立病院 消化器内科), 三浦 将彦(松江市立病院 消化器内科), 村脇 義之(松江市立病院 消化器内科), 谷村 隆志(松江市立病院 消化器内科), 加藤 順(松江市立病院 消化器内科), 上田 直樹(松江市立病院 消化器内科)
抄録 症例1:46歳女性。血便を主訴に近医で大腸内視鏡検査を受け、虫垂開口部に突出する腫瘤を認め、当院消化器内科に紹介となった。造影CTでは虫垂が2cm径に腫大し、内部に同心円状の層構造を認め、注腸造影X線写真では盲腸内にIsp型腫瘤が描出された。MRIでは虫垂部に一致した腫瘤形成と右卵巣方向への浸潤が疑われ、回盲部切除を行った。切除標本では、虫垂根部の漿膜側に嚢胞を認め、虫垂は完全に反転して盲腸内にあり先端の粘膜は壊死していた。病理組織学的に虫垂先端は子宮内膜症と診断され、虫垂先端部の子宮内膜症を先進部とした完全型虫垂重積症と考えられた。症例2:66歳男性。便潜血陽性の精査目的に近医で大腸内視鏡検査を受け、盲腸に茎の太いIp型病変を認め、治療目的に当院消化器内科を受診した。持参した内視鏡画像より虫垂重積症が疑われ、造影CTを施行したところ、盲腸内部に虫垂を取り囲むtarget-like appearanceと3cm大の腫瘤を認め、冠状断、矢状断では腫瘤を先進部とした盲腸内腔に牽引される虫垂が確認された。注腸造影X線写真では虫垂は造影されるが短く、盲腸内部に虫垂から連続するような紡錘状の陰影欠損を認めた。生検上adenocarcinomaであり、内視鏡的切除術では穿孔の危険性があるため、外科的に回盲部切除術を行った。切除標本では虫垂開口部の盲腸に腫瘤を認め、盲腸-虫垂型の重積であった。虫垂重積症はまれな疾患で、虫垂内部の腫瘤や糞石等の異物を排出するための蠕動によって起こるとされる。症例1では虫垂先端が先進部となりAtkinson分類のtype Aから完全型type Eへ進展したと考えられた。症例2は隆起性の病変が虫垂根部にあったためsecondary type Aの形態をとったと考えられた。いずれも安易に内視鏡切除を行えば穿孔の危険があり、盲腸の太い茎を持つポリープを認めた際には、虫垂重積症の可能性をCTなどで十分に検討し、必要に応じ外科的切除を選択する必要があると考えられた。
索引用語 虫垂, 重積