セッション情報 一般演題

タイトル 40:

多発肝転移を伴った8mmの直腸カルチノイドの1例

演者 田中 究(鳥取県立中央病院 消化器内科)
共同演者 石原 俊太郎(鳥取県立中央病院 消化器内科), 前田 和範(鳥取県立中央病院 消化器内科), 岡本 勝(鳥取県立中央病院 消化器内科), 柳谷 淳志(鳥取県立中央病院 消化器内科)
抄録 症例は6●歳、男性。平成2●年7月、腹痛のため近医を受診した際の腹部CTにて肝臓に多発するSOLを認め、精査加療目的で当科紹介となった。既往歴、家族歴は特記事項なし。腹部CTでは肝両葉に低吸収腫瘤が多発しており、転移性肝腫瘍が疑われた。精査のため施行した下部消化管内視鏡検査にて、下部直腸に黄白色調で表面の毛細血管拡張を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。明らかな中心陥凹や潰瘍形成は認めなかった。超音波内視鏡では、長径8mmの境界明瞭で内部エコー均一な第3層(粘膜下層)を中心とした低エコー腫瘤として描出され、深達度sm massiveと考えられた。同病変の生検病理組織では、粘膜筋板から粘膜下層にかけて核異型に乏しい腫瘍細胞がリボン状、胞巣状に増生していた。免疫染色ではSynaptophysin、CD56陽性、ChromograninA陰性、Ki-67指数2%以下で、直腸カルチノイド(NET(neuroendocrine tumor)G1(carcinoid tumor))と診断した。肝臓の結節のエコー下生検の病理組織像もcarcinoid tumorを考えさせ、Synaptophysin、CD56陽性であった。上部消化管内視鏡検査やCTなどで他部位に腫瘍性病変を認めなかった。以上より、多発肝転移を伴う直腸カルチノイドと診断し、化学療法を開始したが、治療奏功せず、約1年の経過で永眠された。直腸カルチノイドは10mm以下の病変では転移の可能性が低いとされているが、10mm以下の小さなカルチノイドでも肝転移を来す症例も希ながら報告されている。今回我々は、多発肝転移を伴った8mmの直腸カルチノイドの症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 直腸カルチノイド, 肝転移