セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR15:

グリセリン浣腸により直腸穿孔、急性腎不全を発症した1例

演者 津島 健(呉共済病院 消化器内科)
共同演者 岡本 志朗(呉共済病院 消化器内科), 関藤 剛(呉共済病院 消化器内科), 畠山 剛(呉共済病院 消化器内科), 野間 文次郎(呉共済病院 消化器内科), 児玉 寛治(呉共済病院 消化器内科), 山口 修司(呉共済病院 消化器内科), 新宅谷 隆太(呉共済病院 外科), 前田 佳之(呉共済病院 外科)
抄録 症例は50代女性。既往歴は尿路結石、虫垂炎術後、内痔核。現病歴は、1年前に大腸内視鏡検査にてadenoma認め、HOTバイオプシーを施行し、今回、再検査目的で大腸内視鏡検査の前処置を行っていた。検査前に残便が残っていたためグリセリン浣腸(120ml)を施行した。施行後、鶏卵大の内痔核の脱出があり、外科医に依頼し、用手還納した。大腸内視鏡検査を中止しその日は帰宅となった。翌日気分不良と血尿、嘔吐で再受診、血液検査で急性腎不全、CT検査にて骨盤底膿瘍、直腸穿孔が疑われ、緊急手術となった。術中所見では、骨盤底に浸出液が浮腫状に貯留しており、染み出すような排液あり、膿瘍の貯留は認めなかった。術中大腸内視鏡検査を施行し、線状の発赤を認めた。また明らかな空気の漏れは認めず、骨盤底炎、直腸間膜周囲炎として、骨盤底ドレナージとS状結腸人工肛門造設術を施行し終了となった。術後1日目、腎不全改善なく、血液透析を開始した。徐々に尿量増え、腎機能改善し、術後9日目に透析終了。術後27日目には退院となった。浣腸の際に、高濃度のグリセリン液が血中に入ったことにより、赤血球の膜障害と溶血が起こり、急性腎不全をきたしたと考えられる。グリセリン浣腸は比較的頻度の高い手技だが、グリセリン浣腸時に患者が疼痛や気分不快を訴えた場合には、浣腸による直腸粘膜の損傷や穿孔の可能性がある。さらに腸管外へのグリセリン液注入は、溶血から急性腎不全を発症する場合があり、注意深い観察と、迅速な対応が必要であると考えられた。今回われわれは、グリセリン浣腸により直腸穿孔、急性腎不全を発症した1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 グリセリン浣腸, 直腸穿孔