セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR14:

偶発性低体温症に急性膵炎を伴った2例

演者 尾上 歩美(松江赤十字病院 消化器内科)
共同演者 矢鉾 隆史(松江赤十字病院 消化器内科), 板倉 由幸(松江赤十字病院 消化器内科), 山本 悦孝(松江赤十字病院 消化器内科), 山下 詔嗣(松江赤十字病院 消化器内科), 原田 恵理奈(松江赤十字病院 消化器内科), 花岡 拓哉(松江赤十字病院 消化器内科), 實藤 宏美(松江赤十字病院 消化器内科), 千貫 大介(松江赤十字病院 消化器内科), 串山 義則(松江赤十字病院 消化器内科), 内田 靖(松江赤十字病院 消化器内科), 香川 幸司(松江赤十字病院 消化器内科)
抄録 今回我々は、低体温症にひき続き急性膵炎を発症した高齢者の2症例を経験したので報告する。【症例1】91歳、女性。平成24年3月、傾眠傾向、活動性低下、食事摂取困難となり救急搬送となる。来院時、腋窩温27.3 ℃、脈拍47回/分であり、電気毛布の電気が切れていたことが低体温の誘因と考えられた。腹痛はなく、AMY 1815 U/L、Lip 3857 U/dLと膵酵素高値、腹部CTにて年齢に比し膵腫大を認め、急性膵炎と診断、入院となる。保温、CPZ/SBT、蛋白分解酵素阻害薬にて治療開始した。全身状態改善したが膵酵素高値は遷延したため、蛋白分解酵素阻害薬を継続内服とし退院となる。【症例2】96歳、女性。平成23年1月、庭で倒れているのを家人が発見し救急搬送となる。膀胱温27.7 ℃、脈拍80回/分であった。復温過程で房室ブロックに伴う高度徐脈を認め、抗血小板薬内服を開始、また肺炎を併発しMEPMを開始した。さらに、AMY 169 U/L、Lip 95 U/dLと膵酵素高値で、腹部CTにて膵腫大を認めたため急性膵炎と診断し、蛋白分解酵素阻害薬にて加療を行い退院となった。翌平成24年12月、自宅で転倒、後頭部打撲にて救急搬送された際、直腸温31.2℃、脈拍60回/分と再び低体温症を認めた。上腹部正中に自発痛・圧痛が認められ、AMY 1861 U/L、Lip 3391 U/dLと膵酵素高値、腹部CTにて膵頭部の腫大、周囲脂肪織の混濁があり、再び急性膵炎と診断、加療を行った。【考察】高齢者は体温調節機能が低下しているため、偶発性低体温症に陥りやすい。低体温症による急性膵炎の発生機序は明確になっていないが、血圧低下により膵虚血になること、また復温に際しては血管拡張により脱水が助長され、血液粘稠度亢進し、微小血栓形成による血流障害が起こることが推察されている。超高齢社会の今日において、今後、偶発性低体温症に遭遇する機会は増えると予想され、その際、急性膵炎の合併も念頭におく必要がある。
索引用語 急性膵炎, 低体温症