セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR04:

肝内多発腫瘤像を呈し、転移性肝腫瘍との鑑別に苦慮した結節性脂肪肝の1例

演者 上田 直樹(松江市立病院 消化器内科)
共同演者 加藤 順(松江市立病院 消化器内科), 谷村 隆志(松江市立病院 消化器内科), 村脇 義之(松江市立病院 消化器内科), 三浦 将彦(松江市立病院 消化器内科), 河野 通盛(松江市立病院 消化器内科), 吉村 禎二(松江市立病院 消化器内科), 山田 稔(松江市立病院 消化器内科)
抄録 【症例】50歳代、男性。【既往歴】特記事項なし。【生活歴】喫煙20本/日、飲酒3合/日。【現病歴】検診で施行された腹部超音波検査で肝内に多発する腫瘍性病変を指摘され当科紹介となった。血液検査ではγ-GTが181IU/lと軽度上昇を認めたほかは肝胆道系酵素の上昇は認めなかった。腹部単純CT検査を行ったところ、肝両葉に2~3cm大の類円形の低吸収腫瘤が多発しており、転移性肝腫瘍がまず第一に鑑別に挙げられた。そこで上部・下部消化管内視鏡検査を行ったが、原発巣となるような病変は指摘できなかった多発肝腫瘤はいずれも、造影CT検査において動脈相では造影効果に乏しく、平衡相で緩徐に淡く造影された。被膜様構造を認めず、また腫瘤内部は肝内門脈や肝静脈などが貫通する像が認められた。造影超音波検査では、造影CT検査と同様に血管相で早期濃染、Kupffer相で欠損像は認めず悪性疑う所見でなかった。MRI検査では、肝内にT1強調画像で高信号、脂肪抑制像では低信号で脂肪成分に富む腫瘤と推定された。拡散強調画像では高信号は認めなかった。以上から正常肝細胞の構造は保ちながら脂肪沈着が見られる構造であり、脂肪肝が限局性に起こり腫瘤像を呈したり多発性に認めることがある結節性脂肪肝が鑑別にあがった。脂肪を伴う肝腫瘤の鑑別の中で結節性脂肪肝の確定診断に迫るために、肝生検を行った。病理結果では脂肪変性を認め、異型性はなく、細胞配列にも乱れなく、腫瘍性病変は見られなかった。上記より、結節性脂肪肝と確定診断に至った。まだら脂肪肝は日常の診療でしばしば遭遇するが一般的には他の脂肪肝と同様に診断は容易である。しかしながら今回は多発した類円形の腫瘤像を呈し転移性肝腫瘍と鑑別が必要となった稀な結節性脂肪肝の1例を経験した。
索引用語 脂肪肝, 転移性肝腫瘍