セッション情報 シンポジウム2「消化管癌のスクリーニング・サーベイランス:現況と今後の展望」

タイトル S2-05:

ハイパースペクトルイメージングを用いた胃癌診断支援システムの開発

演者 五嶋 敦史(萩市民病院 消化器内科)
共同演者 西川 潤(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 清時 秀(周東総合病院 消化器内科), 岡本 健志(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
抄録 【目的】胃癌のスクリーニングは内視鏡を中心に行われているが, 約20%の胃癌が見逃されていると報告されている. また胃癌の発見率は, 検査者の熟練度にも大きく左右される. そこで求められるのが, 検査者の技量に関わらず, 誰でも一定の診断精度を保って, 胃癌の拾い上げができる内視鏡システムの開発である. Hyperspectral imaging(HSI)は, 分光器と画像を組み合わせたデータを扱う技術である. ハイパースペクトルカメラ(HSC)で撮影された画像は, 各ピクセルごとに反射スペクトルデータを記録し, 我々の目では判別できない波長の変化を強調して画像化することが可能である. 我々は胃癌スクリーニングを念頭に反射スペクトルデータを検討し, HSIを用いた胃癌診断支援システムを構築した. 【方法】ESDで一括切除した胃腫瘍,104病巣の切除標本をHSC1701で撮影し, 病理学的に確定した腫瘍部と非腫瘍部よりそれぞれ任意の10点の反射スペクトルデータを抽出した. 104病巣を54の訓練サンプルと50のテストサンプルにランダムに30通りで分割し, 訓練サンプルから腫瘍部と非腫瘍部を鑑別する最適波長を選定, cut-off値の設定を行った. この診断法により, テストサンプルの解析を行い, 感度, 特異度, 正診率を評価した. 【成績】訓練サンプルの解析から腫瘍部と非腫瘍部を鑑別する最適な波長は770nm, cut-off値は腫瘍部の補正反射率の平均値の1/4であった. 770nmにおいて設定したcut-off値を用いてテストサンプルを評価した結果, 感度71%, 特異度98%, 正診率85%で腫瘍部と非腫瘍部を鑑別することができた. また, 画像処理を行うことで腫瘍部を強調表示できた. 【結論】HSIにより, 胃腫瘍と非腫瘍部を鑑別できる診断法を確立し, 腫瘍を強調表示することに成功した. HSIを用いた胃癌診断支援システムの開発は, 胃癌検出能を向上させ, 胃癌スクリーニング, サーベイランスの標準化の実現につながると考える.
索引用語 胃癌, スクリーニング