セッション情報 シンポジウム1「肥満と消化器疾患の関わり」

タイトル S1-05:

NAFLDにおける脂肪分布の変化の検討、および血清マーカーによる病態診断

演者 杉原 誉明(鳥取大学医学部機能病態内科学)
共同演者 孝田 雅彦(鳥取大学医学部機能病態内科学), 村脇 義和(鳥取大学医学部機能病態内科学)
抄録 【背景・目的】肥満は近年増加傾向にあり、それに伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は最も高頻度にみられる肝疾患となった。NAFLDの中で単純性脂肪肝(SS)は予後良好であるが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変や肝癌への進展がみられ予後不良である。NAFLDの診断およびその治療は臨床において重要な課題である。今回我々はNAFLDにおける脂肪分布の重要性及び、NAFLD病態診断の血清バイオマーカーについて検討したので報告する。【方法】NAFLD患者107例と正常対照18例の計125例(男:女=43例:82例 平均年齢52.6歳)を対象とし、腹部超音波で脂肪肝スコア(肝腎コントラスト、深部減衰、高輝度肝、血管の不明瞭化)、内臓脂肪厚、皮下脂肪厚を測定し、脂肪肝と脂肪分布との関連を検討した。次に6ヶ月以上経過観察した28例(男:女=8例:20例 平均年齢53歳 平均BMI26.4 平均観察期間27ヶ月)において体重の変化、脂肪分布の変化、脂肪肝の変化を比較した。また一部の患者では血清M30(CK18 fragment)、を測定しバイオマーカーとしての有用性を検討した。【成績】内臓脂肪厚は、脂肪肝スコアの上昇とともに高値となったが、皮下脂肪厚は有意な関連を認めなかった。経過観察例では、体重変化と内臓脂肪厚の変化とは強い相関(相関係数0.941)を認めており、脂肪肝の変化に最も関連する独立因子として内蔵脂肪厚が抽出された。次に測定した血清M-30値はSSとNASHおよび、F0とF2以上の線維化の間で有意差を認めた。【結論】脂肪肝の発症や進展には、内臓脂肪の蓄積が関連しており、体重のコントロールは内臓脂肪の蓄積を減らし、脂肪肝を改善させることが示唆された。超音波による内臓脂肪の測定は、簡便で無侵襲であり、反復測定が可能なことから、NAFLD患者での治療モニターに有用である。また血清M30値はNAFLDにおける、NASHの鑑別診断に有用なバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。
索引用語 NAFLD, NASH