セッション情報 |
中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)
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タイトル |
JR03:胃原発炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の一例
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演者 |
飯尾 澄夫(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科) |
共同演者 |
桑井 寿雄(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 壷井 章克(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山下 賢(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 保田 和毅(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 檜山 雄一(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 水本 健(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山口 敏紀(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 山口 厚(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 河野 博孝(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科), 高野 博嗣(国立病院機構 呉医療医療センター・中国がんセンター 消化器科) |
抄録 |
今回我々は,生前の診断に苦慮し剖検にて胃炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の最終診断に至った一例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.2012年9月18日,発熱および下血を主訴に当院救急搬送となった.既往歴に多系統委縮症がありADLは全介助であった. 来院時理学的所見は体温 38.9度, 血圧 83/49 mmHg, 脈拍 105 bpmで腹部症状はみとめなかった. 血液生化学的検査ではHb 7.5 g/dl, 白血球数 8200/μL, CRP 6.7 mg/mLと貧血と炎症反応上昇をみとめ, 可溶性IL-2R は2310IU/Lと軽度上昇をみとめるのみで, ウイルス感染や真菌感染に関する検査ではいずれも陰性であった.CT検査では胃体上部大弯を主体に中心陥凹を伴う不整な壁肥厚と, 胃小弯, 大弯, 脾門部にリンパ節腫大をみとめた. 上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃体上部前壁から大弯に大きな潰瘍性病変をみとめ,悪性リンパ腫などが疑われたが生検では炎症性肉芽組織のみで腫瘍性病変はみとめなかった.一方でGrocotto染色にてムコール様の真菌をみとめたため,診断的治療目的に抗真菌薬を投与したがその後も発熱が持続し病変は増大傾向であった.診断に苦慮したため,病変より繰り返し生検を施行し,さらにはESDの要領で病変組織の一部を切除し病理に提出したが,所見は同様で肉芽組織をみとめるのみであった.当初より外科的切除も考慮したが,本人が頑なに拒否され発熱および病変の増大により全身状態は悪化,2012年12月4日肺炎にて死亡した.最終的には剖検での摘出標本にて胃炎症性筋線維芽細胞性腫瘍 (IMT)と診断された.IMTは筋線維芽細胞様の紡錘形細胞の増殖からなりリンパ球や形質細胞などの炎症細胞浸潤を伴う低悪性度の腫瘍で非常に稀な疾患とされている.特異的な症状はなく血液検査や画像検査から診断することは困難とされているが,本症例では複数回の病理検査にて炎症性肉芽組織をみとめていることから,IMTを鑑別疾患の一つとして念頭に置くことが必要であったと考えられた. |
索引用語 |
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍, IMT |