セッション情報 シンポジウム1「肥満と消化器疾患の関わり」

タイトル S1-02:

肥満と脂肪肝、逆流性食道炎の関連についての検討

演者 野中 裕広(JA広島総合病院 消化器内科)
共同演者 徳毛 宏則(JA広島総合病院 消化器内科), 小松 弘尚(JA広島総合病院 消化器内科), 石田 邦夫(JA広島総合病院 消化器内科)
抄録 【目的】近年、わが国においてはライフスタイルの欧米化に伴い肥満人口が増加してきている。また肥満に高血圧、脂質代謝異常、耐糖能障害を複数合併したメタボリックシンドローム(Mets)も増えている。Metsは動脈硬化性疾患と因果関係があることが知られているが、近年消化器疾患との関連も注目されてきている。そこで今回われわれは健診受診者を対象に肥満に関連があるとされる脂肪肝、逆流性食道炎との相関を検討した。【方法】対象は2008年4月1日から2013年7月31日までに当院で健診を受診したのべ22060例のうち重複を除いた8466例(男性4404例、女性4062例)である。BMIで層別化した各群において生活習慣病合併の有無、腹部超音波検査にて判定した脂肪肝の有無・程度、内視鏡画像にて判定した逆流性食道炎の有無について比較検討を行った。【成績】対象の年齢は50.7±13.3歳、BMIは男性23.5±3.2で女性21.7±3.3、腹囲は男性84.1±8.7cmで女性は76.9±9.4cmであった。男性、女性ともBMIの増加に伴い糖質代謝の悪化(FBS・HbA1cの上昇)、脂質代謝の悪化(LDL・TGの上昇、HDLの低下)、拡張期・収縮期血圧の上昇、尿酸値の上昇が見られた。また脂肪肝の有病率はBMIと並行して増加した。さらに脂肪肝の程度別に解析すると、とりわけ中等度・高度脂肪肝群の割合がBMIの増加とともに上昇していた。また逆流性食道炎の有病率はBMIに比して増加する傾向にあった。【結論】BMIの増加に伴い生活習慣病に関わる因子の悪化が見られたことに加え、脂肪肝の有無・程度の悪化が見られた。生活習慣病と関連がある脂肪性肝疾患であるNAFLDにおいては心血管イベントや肝疾患の死亡リスクが高まることが知られている。一方、逆流性食道炎は致死性ではないが故に、医療機関を受診せずに経過しQOLを損なっていることが多い疾患である。臨床の現場において肥満症を診た際には、NAFLDや逆流性食道炎が潜在している可能性も念頭におく必要があると考えられた。
索引用語 NAFLD, メタボリックシンドローム