セッション情報 シンポジウム2「消化管疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S2-04:

当院における小腸内視鏡検査の現状

演者 松岡 正記(土佐市立土佐市民病院 消化器内科)
共同演者 植 瑞希(土佐市立土佐市民病院 消化器内科), 並川 智香子(土佐市立土佐市民病院 消化器内科), 田中 肇(土佐市立土佐市民病院 消化器内科)
抄録 【目的】当院では、比較的早期からバルーン式小腸内視鏡を導入し、出血症例を中心に積極的に小腸疾患の診療を行っている。今回、症例が蓄積されてきたので、その現状を報告したい。【方法】検査機器は、初期はフジノン社製ダブルバルーン小腸内視鏡システム、2008年1月からはオリンパス社製シングルバルーンシステムを使用した。【成績】検査件数は、2005年11月から2013年3月まで、48例(男性27、女性21)の60件であった。年齢は19~97歳であったが、70歳代13、80歳代9、90歳代4例と高齢者が半数以上を占めた。検査目的は、顕性出血の原因精査が23例、不顕性出血が12例、イレウスが6例、腹痛が5例などであった。診断が可能だった疾患は、anigoectasiaなどの血管病変が4例(空腸1,回腸3)、小腸潰瘍4例(空腸1,回腸3)、小腸炎3例(空腸1,回腸2)、クローン病3例、空腸粘膜下腫瘍2例、他臓器浸潤癌2例、空腸癌、MALTリンパ腫、放射線性小腸炎、メッケル憩室、食物塊、異物、腸重積各1例などであった。小腸炎・潰瘍の多数例は、NSAIDsが原因と推測された。また、大腸憩室や十二指腸潰瘍からの出血で、小腸以外の病変からの出血が確認されたものが6例、異常が指摘できなかったものが13 例存在した。カプセル内視鏡も行われたものは7例であり、うちカプセルでも診断されていたものが4例、他の3例(回腸潰瘍,メッケル憩室,十二指腸第3部憩室出血の各1例)は、小腸内視鏡のみにて病変を確認できた。処置・治療は、血管性病変などに対してAPCにて6例、クリップにて3例に止血、食物塊に対して粉砕、異物除去、イレウス解除、各種疾患に生検(15例)などが行われた。【結論】比較的侵襲性が高いと思われがちな小腸内視鏡検査であるが、高齢者の施行例が多かったにもかかわらず、トラブルなく施行できた。実際には、小腸以外の病変からの出血例もあり、注意が必要であった。また、カプセルで異常を指摘できなかった症例も存在した。今後、NSAIDsの使用頻度の増加や高齢化に伴い、高齢者の検査必要例がますます増加すると思われ、小腸内視鏡検査の重要性が再確認された。
索引用語 小腸, 高齢者