セッション情報 シンポジウム1「肝胆膵疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S1-15:

新規化学療法時代における愛媛県膵癌診療の現状と展望

演者 熊木 天児(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学DELIMITER済生会今治病院)
共同演者 黒田 太良(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学), 横田 智行(松山赤十字病院肝胆膵センター), 清家 裕貴(市立宇和島病院), 西山 麻里(松山市民病院), 今井 祐輔(愛媛県立中央病院), 稲田 暢(済生会松山病院), 芝田 直純(愛媛県立新居浜病院), 今峰 聡(市立大洲病院), 岡田 眞一(済生会西条病院), 小泉 光仁(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学), 山西 浩文(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学), 畔元 信明(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学), 長谷部 昌(済生会今治病院), 田中 良憲(松山市民病院), 達川 はるか(愛媛県立中央病院), 宇都宮 大貴(愛媛県立中央病院), 恩地 森一(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学DELIMITER済生会今治病院), 日浅 陽一(愛媛大学 消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【背景】新規化学療法時代に入り本邦における膵癌の予後は改善しているが,2007年以降の膵癌診療の現状は明らかではない.また,高齢者においても化学療法の安全性と有効性が報告されているが,治療法の選択に難渋することがある.
【目的】新規化学療法時代における愛媛県膵癌診療の現状を明らかにする.
【方法】対象は2001年~2010年までに愛媛県内多施設で膵癌と診断された1082例.性別,年齢,診断日,病期,治療法,治療選択の理由,転帰についてデータを収集.患者背景,治療法の変遷,生存期間について解析した.
【結果】本調査で診断された膵癌患者は,stage IVa, IVbで診断される症例が多く(82%),5年生存率も7%と全国調査と同程度である一方,比較的高齢であった(平均年齢:男69歳,女74歳).前期(2001-2005年,n=406)と比較し,後期(2006-2010年,n=676)では緩和ケア(BSC)症例の減少および化学療法症例の増加(P<0.0001)が見られ,生存期間が改善していた(P<0.01).年齢別解析では,高齢者群(65歳以上,n=792)は非高齢者群(65歳未満,n=290)に比して有意にBSC群が多く,化学療法群が少なく,生存期間が短かった(全てP<0.01).BSCの理由が明らかな高齢者(n=261)のうち51%に本来は化学療法の適応があると考えられた.さらに,そのうち70%が本人へ未告知であり,高齢であること,家族が希望しなかったこと,主治医が積極的にすすめなかったことがBSCを選択する要因であった.一方,化学療法群のうち高齢者群(n=410)と非高齢者群(n=209)における生存期間に有意差はみられなかった.
【結語】新規化学療法時代における愛媛県膵癌診療の現状が明らかとなり,化学療法を選択する症例の増加により2006年以降の生存率は向上した.高齢者でも化学療法により生存期間が延長していたが,高齢者を中心に化学療法の適応があるにも関わらずBSCを選択されている症例が多く,慎重な治療選択が望まれる.
索引用語 膵癌, 予後