セッション情報 シンポジウム2「消化管疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S2-12:

HER2陽性切除不能進行胃癌に対するDocetaxel+Cisplatin+S-1+Trastuzumab(DCS-T)療法の安全性及び有効性の検討

演者 藤野 泰輝(徳島大学病院 消化器内科)
共同演者 宮本 弘志(徳島大学病院 消化器内科), 村山 典聡(徳島大学病院 消化器内科), 中村 文香(徳島大学病院 消化器内科), 岸 久美子(徳島大学病院 消化器内科), 大塚 加奈子(徳島大学病院 消化器内科), 三好 人生(徳島大学病院 消化器内科), 高場 梓(徳島大学病院 消化器内科), 香川 美和子(徳島大学病院 消化器内科), 郷司 敬洋(徳島大学病院 消化器内科), 矢野 弘美(徳島大学病院 消化器内科), 北村 晋志(徳島大学病院 消化器内科), 六車 直樹(徳島大学病院 消化器内科), 岡久 稔也(徳島大学病院 消化器内科), 佐藤 康史(札幌医科大学第4内科), 加藤 淳二(札幌医科大学第4内科), 高山 哲治(徳島大学病院 消化器内科)
抄録 【背景】新規抗癌剤の開発により進行胃癌の治療成績は改善しているが、切除不能進行胃癌の治療成績は未だ満足するべきものではない。我々はこれまで、切除不能進行胃癌を対象にDocetaxel+Cisplatin+S-1(DCS)療法の第I相及びII相試験を行い、高い有効性を示すことを報告した(Cancer Chemo Pharmacol, 2010)。また、切除可能な進行胃癌(stageIII)を対象にDCS療法の術前化学療法としての有効性を調べる第II相試験を行い、その有効性を報告した(Cancer Chemo Pharmacol, 2013)。一方、胃癌の約20%ではヒト上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーの一つであるHER2が過剰発現し、抗HER2モノクローナル抗体(Trastuzumab; Tmab)が高い有効性を示すことが報告され(Toga試験)、我が国でも2011年3月に保険適応となった。そこで、今回我々はHER2陽性切除不能進行胃癌を対象にDCS+Tmab(DCS-T)療法を行い、安全性及び有効性を検討した。【対象・方法】HER2陽性切除不能進行胃癌12例を対象とした。S-1(80mg/m2)を2週間(day 1~14)経口投与、day 8にDocetaxel(50mg/m2)、CDDP(60mg/m2)、Herceptin(6mg/kg 初回は8mg/kg)を経静脈的投与し、3週1サイクルとした。CTCAE v4.0及びRECIST v1.1に準じて有害事象及び治療効果判定を行った。【結果】12例全例でPRが得られた。4例では転移巣が完全に消失(down staging)し、根治手術を行うことができた。7例で1コース目にPRとなった。Grade 3/4好中球減少を10例に認めたが、発熱性好中球減少は1例であった。Grade 2/3の食欲不振を6例に認めた。Grade 2/3の下痢を8例に認めた。Grade 2/3の口内炎を4例に認めた。Grade 2のアレルギー反応を1例に認めた。治療関連死は認められなかった。【考察】切除不能進行胃癌に対するDCS-T療法は認容可能な治療法であり、極めて高い有効性を示すことが示唆された。まだ症例数は少ないものの、多くの症例で1コース終了後にPRとなり、30%以上の症例でdown stagingして根治手術を受けられることが示唆された。今後、症例を重ねて安全性と有効性を検討する予定である。
索引用語 胃癌, DCS