セッション情報 一般演題

タイトル 30:

巨大門脈大循環シャントによる肝性脳症に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術(B-RTO)と部分的脾動脈塞栓術(PSE)の併用療法が有効であった一例

演者 小泉 洋平(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 廣岡 昌史(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学), 越智 裕紀(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学), 多田 藤政(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学), 徳本 良雄(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学), 阿部 雅則(愛媛大学大学院 地域医療学), 田中 宏明(愛媛大学大学院 放射線医学), 松浦 文三(愛媛大学大学院 地域生活習慣病内分泌学), 日浅 陽一(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 症例は64歳女性、アルコール性肝硬変で加療中、肝性脳症を合併して入退院を繰り返していた。腹部造影CT検査で腎静脈系シャントがみられた。門脈大循環シャントによる肝性脳症が疑われ、バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術(B-RTO)目的に当科入院した。【入院時血液検査所見】WBC 1700 ×1000μl、Hb 10.5 mg/dl、血小板数 4.2万/μl、AST 52 IU/L、ALT 24 IU/L、T. Bil 1.2 mg/dl、Alb 2.6 g/dl、LDH 255 IU/L、PT 42.5%、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性【入院後経過】造影CTで最大径2.1cmと巨大な左腎静脈-左胃静脈シャントがみられた。血管造影で上腸間膜静脈からの造影では、全血流は左腎静脈-左胃静脈シャントから大循環へ流出し、求肝性の血流はみられなかった。肝動脈造影では、肝実質の濃染と、遠肝性に門脈の描出がみられた。左腎静脈からバルーンカテーテルを挿入し、シャント部をバルーンで閉塞した状態と開放した状態でそれぞれ肝静脈圧(HVPG)を測定したところ、バルーン閉塞時のHVPGは18.6 mmHgであり開放時のHVPG 8.53 mmHgと比較して高度の上昇がみられた。B-RTOによるシャント閉塞で門脈圧亢進の悪化が予想されたため、処置を一旦中止し、門脈圧を低下させる目的で部分的脾動脈塞栓術(PSE)を先行して施行し、その後B-RTOを行う方針とした。PSE後に再度血管造影を施行し、バルーン閉塞時のHVPGを測定した。HVPGは10.1 mmHgと低下し、B-RTOを施行した。術後脳症は改善し、退院後現在まで6か月間、脳症の再発はみられていない。【考察】近年、高度の門脈圧亢進症例に対するPSEとB-RTOの併用療法の安全性と有用性が報告されている。本症例は、巨大な左腎静脈-左胃静脈シャントがみられ、B-RTOによるシャント閉塞で門脈圧亢進の悪化が予想されたため、PSEを施行後にB-RTOを施行することで、門脈圧亢進の悪化を軽減することが可能であった。門脈大循環シャントを有する肝性脳症症例に対してB-RTOで治療を行う際に、門脈圧亢進の悪化が予想される際には、PSEが有用と考えられる。
索引用語 バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術, 部分的脾動脈塞栓術