セッション情報 シンポジウム1「肝胆膵疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S1-01:

肝癌診断におけるPIVKA-II/ NX-PVKA ratioの腫瘍マーカーとしての意義―従来型PIVKA-IIと比較して―

演者 谷口 達哉(徳島大学病院 消化器内科)
共同演者 松本 友里(徳島大学病院 消化器内科), 岡崎 潤(徳島大学病院 消化器内科), 田中 宏典(徳島大学病院 消化器内科), 友成 哲(徳島大学病院 消化器内科), 高岡 遠(徳島大学病院 消化器内科), 原田 利枝(徳島大学病院 消化器内科), 佐藤 桃子(徳島大学病院 消化器内科), 玉木 克佳(徳島大学病院), 三宮 勝隆(徳島大学病院 消化器内科), 高山 哲治(徳島大学病院 消化器内科)
抄録 【目的】PIVKA-IIは、AFPに比べて特異性の高い肝細胞癌(HCC)の腫瘍マーカーであるが、ビタミンK欠乏状態では偽陽性になるという問題点がある。近年、ビタミンK欠乏時に誘導されるPIVKA-II(NX-PVKA)を特異的に測定するキットが開発された。そこで今回我々は、HCC患者のPIVKA-II及びNX-PVKAを測定し、PIVKA-II/ NX-PVKA ratio (NX-PVKA-R)の腫瘍マーカーとしての意義を検討した。【方法】当院で診断したHCC170例、肝硬変(LC)13例、慢性肝炎(CH)48例、閉塞性黄疸(OJ)12例、ワーファリン服用者(WU)10例、健常人(NS)36例の計289例を対象とした。PIVKA-II及びNX-PVKAはECLIA法により測定し、cut off値はPIVKA-II 40mAU/mlとNX-PVKA-R 1.4と設定した。【成績】HCCにおけるPIVKA-IIの陽性率は71.0%,特異度は72.6%であった。NX-PVKA-Rの陽性率は、59.7%,特異度は91.7%であった。NX-PVKA-RのROC解析では、PIVKA-IIに比べてAUCが有意に大きかった。PIVKA-II及びNX-PVKA-Rの陽性率は、いずれもstageが進むにつれて増加した。但し、stageIV症例においては、NX-PVKA値そのものが高率(81.8%)に陽性であった。NX-PVKA陽性例はいずれも門脈浸潤が認められ、陰性例に比べて生存期間が有意に短かった(P=0.035)。【結語】HCCの診断において、NX-PVKA-Rは従来型のPIVKA-IIに比べて感度はやや低いものの特異度が極めて高く、優れた診断マーカーであることが示唆された。また、NX-PVKA陽性例は門脈浸潤を高率に認め、予後不良マーカーになることが示唆された。
索引用語 肝細胞癌, PIVKA-II