セッション情報 一般演題(初期研修医)

タイトル 11:

炎症性大動脈瘤および後腹膜線維症を合併したIgG4関連自己免疫性膵炎の1例

演者 枝川 広志(徳島赤十字病院 消化器科)
共同演者 桑山 泰治(徳島赤十字病院 消化器科), 宮本 佳彦(徳島赤十字病院 消化器科), 中井 陽(徳島赤十字病院 消化器科), 山本 英司(徳島赤十字病院 消化器科), 島田 直(徳島赤十字病院 消化器科), 野々木 理子(徳島赤十字病院 消化器科), 後藤田 康夫(徳島赤十字病院 消化器科), 佐藤 幸一(徳島赤十字病院 消化器科), 片岡 孝一(片岡内科消化器クリニック)
抄録 【はじめに】IgG4関連自己免疫性膵炎は、自己免疫性膵炎の亜型で中高年齢の男性に多いとされ、膵腫大を伴い、多臓器にわたる合併症が報告されている。また2009年に笠島らにより炎症性大動脈瘤の一部にIgG4関連硬化性病変が含まれていることが報告された。今回我々は炎症性大動脈瘤に対する術後4年でIgG4関連自己免疫性膵炎・後腹膜線維症と診断した1例を経験したため報告する。【症例】69歳、男性【主訴】なし【現病歴】2008年7月に最大径60mmの炎症性大動脈瘤に対して腹部大動脈置換術を当院心臓血管外科にて施行した。術中所見は外膜の肥厚が目立っていたが提出された病理組織には血栓のみの所見であり外膜の組織はなかった。以後、外来にてフォローされていたが、2012年になり腎機能障害が出現し、CTにて右水腎・尿管周囲の後腹膜線維症、膵体尾部のびまん性腫大を認めたため当科紹介された。【経過】ERCPにて膵体尾部膵管の不整な狭小化を認めた。膵管ブラッシングによる細胞診を2度施行したが、腺癌やリンパ腫を疑う所見は認められなかった。またIgG4 145mg/glと上昇を認めた。腫瘍マーカーは陰性であった。IgG4関連疾患による自己免疫性膵炎、後腹膜線維症・右水腎、および以前手術した炎症性大動脈瘤も合併症と考えられた。超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診は当科で緊急で行えない事、開腹生検による負担の大きさから、本人に十分なインフォームドコンセントを行いステロイド治療(PSL 30mg/day)を開始した。治療開始後11日目のCTにて膵腫大・右水腎の改善傾向を認めた。また治療開始後3カ月目のCTでは人工血管周囲の大動脈壁軟部影縮小も認めた。ステロイドへの反応からIgG4関連疾患と診断した。【考察】本症例では炎症性大動脈瘤に対しては既に手術が施行されていたが、手術を行わずにステロイド治療を始めた場合は大動脈瘤の拡張予防が期待される反面、動脈壁の菲薄化による破裂も危惧される。IgG4関連疾患で炎症性大動脈瘤を合併した際の対応など若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 IgG4関連自己免疫性膵炎, 炎症性大動脈瘤