セッション情報 シンポジウム1「肝胆膵疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S1-07:

門脈血栓症に対するダナパロイドナトリウムの有用性についての検討

演者 廣瀬 享(高知大学 医学部 消化器内科学)
共同演者 宗景 玄祐(高知大学 医学部 消化器内科学), 越智 経浩(高知大学 医学部 消化器内科学), 小笠原 光成(高知大学 医学部 消化器内科学), 高橋 昌也(高知大学 医学部 消化器内科学), 小野 正文(高知大学 医学部 消化器内科学), 岩崎 信二(高知大学 医学部 消化器内科学), 西原 利治(高知大学 医学部 消化器内科学)
抄録 【目的】門脈血栓症は種々の疾患に合併しうる病態で、特に肝疾患に対する治療後においては比較的多く見られる。肝予備能に重大な悪影響を及ぼす合併症であるが、門脈血栓症に対する標準的治療法はない。そこでわれわれは当科において行った門脈血栓症に対するダナパロイドナトリウムの使用経験について検討したので報告する。【方法】2006年5月~2013年3月までに、門脈血栓症に対してダナパロイドナトリウムを投与し、経過を追跡し得た延べ34症例(男性18例、女性16例)、平均67.4歳(39~88歳)、肝硬変症例28例、非肝硬変症例6例を対象とし、門脈血栓症の原因と考えられる治療手技、発症から治療開始までの期間、投与量、治療期間、および腹部CTにて血栓縮小効果をretrospectiveに検討した。【結果】門脈血栓症の原因と考えられる治療手技は、PEIT 6例、RFA6例、TACE 3例、PSE 2例、EIS 2例、脾摘術1例、その他 3例、不明 11例であった。投与量は全例2500mg/日、投与期間は平均20.9±8.2日間(7~40日間)であった。症例34例中23例(70%)で血栓は消失し、9例(26%)で縮小効果を認めた。2例(4%)では血栓の縮小は得られなかった。過去の画像検査により血栓の形成時期が、治療開始から90日以内であることが明らかな症例25例では、全例で血栓の消失または縮小が得られた。血栓縮小効果を認め、2カ月以上の経過を観察し得た症例27例のうち、ワルファリンカリウムによる維持療法が行われたのは18例で、うち1例(6%)で再発を認めた。維持療法を行わなかったのは8例で、うち4例(50%)で再発を認めた。再発を認めた4例中3例で、再治療により血栓の縮小効果を認め、ワルファリンカリウムによる維持療法で以後、血栓の形成は見られなかった。治療期間中、出血などの合併症は見られなかった。【結論】門脈血栓症に対してダナパロイドナトリウムは有効であり、高率に血栓の消失、縮小効果が期待できる。また、肝硬変症例に対して安全に使用することが可能であった。ワルファリンカリウムによる維持療法は、門脈血栓症の予防に効果がある可能性が示唆された。
索引用語 門脈血栓症, ダナパロイドナトリウム