セッション情報 一般演題

タイトル 24:

化膿性門脈炎の一例

演者 北川 達也(高知大学 医学部 消化器内科学)
共同演者 廣瀬 享(高知大学 医学部 消化器内科学), 石川 洋一(高知大学 医学部 消化器内科学), 宗景 玄祐(高知大学 医学部 消化器内科学), 越智 経浩(高知大学 医学部 消化器内科学), 小笠原 光成(高知大学 医学部 消化器内科学), 高橋 昌也(高知大学 医学部 消化器内科学), 小野 正文(高知大学 医学部 消化器内科学), 岩崎 信二(高知大学 医学部 消化器内科学), 西原 利治(高知大学 医学部 消化器内科学)
抄録 症例は50歳代の男性。平成24年10月13日より38度台の発熱のため近医を受診した。軟便、軽度の上腹部痛を認め、肝機能障害と炎症反応高値を指摘された。投薬をうけるも改善なく、10月31日某病院へ紹介入院となる。腹部CTで肝右後区域枝の門脈内塞栓および肝膿瘍が疑われ、抗菌薬の投与とワルファリンカリウムが開始された。しかし発熱が持続、炎症反応および肝機能障害の悪化を認め11月2日当科へ転院となる。腹部USでは門脈右後区域枝は低エコーな塞栓により血流は途絶し、その末梢側の門脈も拡張し内腔に低エコーな塞栓が充満していた。TAZ/PIPC13.5g/日、ダナパロイドナトリウムの投与を開始し、肝右葉後区域に多発する10mm程度の低エコー領域に対し吸引針生検を行ったところ、白色調の液状物が採取され、肝膿瘍と診断された。培養検査では起炎菌は同定できなかった。炎症反応は改善傾向を認めたが、第7病日、腹部CTを再検したところ、塞栓は門脈右枝まで進展、増悪を認めた。画像所見、生検結果およびダナパロイドナトリウム投与下での塞栓の増悪から、門脈内に膿瘍が充満していると考え、第12病日、経皮的門脈針生検を行った。生検の結果、好中球と壊死細胞からなる前回の生検に類似した膿瘍内容様の物質を認め、化膿性門脈炎と診断した。門脈生検直後より、発熱、炎症反応の悪化を認めたため、抗菌薬をABPC4.0g/日、MEPM1.0g/日に変更した。その後炎症反応は改善、肝膿瘍も消失した。第26病日の腹部CTで、門脈右枝は狭小化し、血流は途絶したままとなったが、門脈内の塞栓物は消失していた。抗菌薬は内服に切り替え、ダナパロイドナトリウムを中止し、ワルファリンカリウムに変更後、退院となった。化膿性門脈炎は、腹腔内感染症や胆道系感染症に合併する比較的稀な病態である。今回我々は、特徴的な画像所見を示し、広域スペクトラムの抗菌薬の投与により改善した化膿性門脈炎の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 化膿性門脈炎, 肝膿瘍