セッション情報 シンポジウム2「消化管疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S2-13:

局所進行下部直腸癌に対する術前化学放射線療法併用内肛門括約筋切除術(ISR)の成績

演者 東島 潤(徳島大学消化器・移植外科)
共同演者 佐藤  宏彦(徳島大学消化器・移植外科), 島田  光生(徳島大学消化器・移植外科), 栗田  信浩(徳島大学消化器・移植外科), 岩田  貴(徳島大学消化器・移植外科), 吉川  幸造(徳島大学消化器・移植外科), 近清  素也(徳島大学消化器・移植外科), 西  正暁(徳島大学消化器・移植外科), 柏原 秀也(徳島大学消化器・移植外科), 松本 規子(徳島大学消化器・移植外科), 江藤  祥平(徳島大学消化器・移植外科)
抄録 【目的】近年、Intersphincteric resection(ISR)を主とした肛門温存手術が実施されるようになった。また海外では下部直腸癌に術前化学放射線療法(CRT)が施行されているが、日本でのエビデンスは少ない。今回、我々は局所進行下部直腸癌に対する術前CRT併用ISR後の根治性と排便機能について検討し、新しい知見を得たので報告する。【CRTの適応】局在部位にRbを含む深達度がT2以深あるいはN陽性症例。 【ISRの適応】腫瘍の最下縁が歯状線から3cm以内で肛門挙筋や外括約筋浸潤を認めない症例。【対象・方法】1.2000年から2012年に経験したCRT症例43例(ISR14例、APR 29例)を対象として、臨床病理学的因子と根治性についてISRとAPRを比較検討した。2. 2000年から2012年に経験したCRT症例41例(ISR14例、LAR 27例)とその内排便機能のアンケートが可能であった19例(ISR 7例、LAR 12例)を対象として、術後合併症と排便機能についてISRとLARを比較検討した。【結果】1.pStage 0:4例、I:10例、II:16例、III:13例。組織学的grede0:1例grede1a:16例、1b:10例、2:12例、3:4例。予後は、5年生存率(ISR:APR)は86%:96%、5年無再発生存率は57%:65%、局所再発率は23%:11%、遠隔再発率は23%:21%で有意差なし(表1)。遠隔再発臓器はISRでは50%が肝、17%が肺、APRでは11%、44%であった。2.合併症率(ISR:LAR)は36%:30%、縫合不全率C-DI,IIは21%:19%、C-DIIIaは0%:0%、吻合部狭窄率は7%:7%に認められ、一時的人工肛門閉鎖率は58%:65%、再造設率は29%:15%で有意差なし。平均排便回数/日(ISR:LAR)(1年、3年)は(5.0、2.0:7.0、5.0)で、平均Wexner score(WS)は8.1、2.5:6.6、2.3で有意差はなく(図1)、両群とも経時的な改善を認めた。 【結語】術前CRT後のISRは腫瘍学的にはAPRと同等であり、また合併症・排便機能はLARと同等であり、下部直腸癌に対して有用である。
索引用語 術前化学放射線療法, 内肛門括約筋切除