セッション情報 一般演題

タイトル 32:

腹水を契機に診断された肝硬変合併形質細胞性造血器腫瘍の1例

演者 田中 宏典(徳島大学病院 消化器内科)
共同演者 谷口 達哉(徳島大学病院 消化器内科), 松本 友里(徳島大学病院 消化器内科), 岡崎 潤(徳島大学病院 消化器内科), 友成 哲(徳島大学病院 消化器内科), 高岡 遠(徳島大学病院 消化器内科), 原田 利枝(徳島大学病院 消化器内科), 佐藤 桃子(徳島大学病院 消化器内科), 三宮 勝隆(徳島大学病院 消化器内科), 原田 武志(徳島大学病院 血液内科), 高山 哲治(徳島大学病院 消化器内科)
抄録 症例は70歳代男性。アルコール性肝硬変で近医通院中、肝細胞癌(HCC)と診断され、2010年6月精査・加療目的に当科に紹介。肝両葉に大きさ2-3cmのHCCを2個認め肝動脈塞栓術(TAE)およびラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した。3年後にHCCが再発し、以後TAE、RFAによる治療を繰り返していた。2012年3月より少量の腹水が出現し、初めは利尿薬投与によりコントロール可能であったが、9月頃より腹水が急速に増加した。腹水穿刺を施行し、細胞診を行ったところ、核肥大、核形不整、明瞭な核小体、クロマチン増量を伴う異型細胞を認めた。免疫染色ではCD56(+)、CD38(+)、CD138(+)、CD30(-)、HHV-8(-)、EBER(-)であった。また、κ λ染色ではλ鎖が強陽性であり、殆どの細胞でKI67染色陽性であった。免疫グロブリンの遺伝子再構成はH鎖JH(-)であったが、L鎖Cλ(+)であった。また、尿中Bence Jones蛋白(λ型)を認めた。PET-CT検査では、腹壁や腸間膜にSUVmax 5.8までの結節状のFDG集積が複数みられたが、他の部位への集積はみられなかった。骨髄検査ではplasma cell 4.4%とやや増加していたが、明らかな形態異常は認めなかった。以上より、腹腔内を主座とする形質細胞性造血器腫瘍と診断した。プレドニゾロン(30mg/日)による治療開始したが効果は得られなかった。そこで、ボルテゾミブ(1.69mg/週)に変更し治療を継続したが、腹水は徐々に増悪し、発症7カ月後に永眠された。形質細胞性造血器腫瘍は、骨や咽頭・扁桃などの軟部組織中に腫瘍を形成することが多く、腹腔内に発生することは極めて稀である。本例は、肝硬変患者において大量腹水を契機に発見された腹腔内形質細胞性造血器腫瘍であり、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 形質細胞, 肝硬変