セッション情報 シンポジウム1「肝胆膵疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル 29:

シャント脳症に対する部分的B-RTOの検討

演者 小笠原 光成(高知大学 医学部 第一内科)
共同演者 越智 経浩(高知大学 医学部 第一内科), 宗景 玄祐(高知大学 医学部 第一内科), 廣瀬 享(高知大学 医学部 第一内科), 高橋 昌也(高知大学 医学部 第一内科), 小野 正文(高知大学 医学部 第一内科), 岩崎 信二(高知大学 医学部 第一内科), 西原 利治(高知大学 医学部 第一内科), 山西 伴明(高知大学 医学部 放射線科), 田村 泰治(高知大学 医学部 放射線科)
抄録 【目的】バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)は孤立性胃静脈瘤に対し確立した治療法であるが、門脈圧亢進症に伴うシャント脳症の治療としても有効とされている。しかしバルーンによる閉塞が困難である等の理由により、5%Ethanolamine oleate(EOI)での塞栓が不可能である症例も認める。そこで我々はB-RTOにdetachable coil(DC)を用いた部分塞栓を施行し、その有用性を検討した。【方法】対象は2002年から2011年までにコントロール困難な肝性脳症に対しB-RTOを施行した8症例。5%EOIによる塞栓が4症例、DCによる塞栓が4症例。5%EOI群は年齢中央値66.5(48-79)歳、男性2名、女性2名、HCV 2例、HBV 1例、AIH 1例、Child-Pughは平均9点。DC群は年齢中央値68(57-73)歳、男性1名、女性3名、HCV 3例、アルコール1例、Child-Pughは平均8点であった。5% EOI群ではバルーン付カテーテルを用い、5%EOIを注入し塞栓施行。DC群では4Fr. コブラ型カテーテルまたは 4Fr. モディファイドシモンズ、マイクロカテーテルにRenagade-18を用い、detachable coil (IDC, GDC)、tornade coil、C-stopper coilにて塞栓施行。血中アンモニア(NH3)濃度、肝予備能等を検討した。【結果】5%EOI群での平均注入回数は3(1-3)回、1回の5% EOI注入量の中央値は7(3-10)ml。DC群ではdetachable coilを平均15(7-21)個使用。血中NH3は5%EOI群で施行前中央値は140.5(136-200)μmol/Lであり、塞栓施行後中央値は46.5(34-53)μmol/Lであった。DC群での施行前NH3中央値は168.5(122-203)μmol/L、施行後中央値は86(70-102)μmol/L と低下を認めた。肝予備能の検討では、施行前後で明らかな変化は認めなかった。また、5%EOI群では1例で腹水が難治性となったが、DC群では明らかな合併症は認めなかった。【考察】バルーンによる閉塞が困難な症例において、DCを用いたB-RTOは、部分的塞栓でもNH3の低下が認められ、シャント脳症の発症が抑制可能であった。症例数が少ないため統計的な有意差は検討できなかったが、DCを用いた部分塞栓はシャント脳症の治療に有用と考えられた。
索引用語 B-RTO, シャント脳症