セッション情報 シンポジウム1「肝胆膵疾患領域における診療の現状と展望」

タイトル S1-08:

高齢ドナー肝再生不全と加齢指標マーカーについての検討

演者 荒川 悠佑(徳島大学 外科)
共同演者 島田 光生(徳島大学 外科), 石川 大地(徳島大学 外科), 山田 眞一郎(徳島大学 外科), 斉藤 裕(徳島大学 外科), 岩橋 衆一(徳島大学 外科), 金本 真美(徳島大学 外科), 森 大樹(徳島大学 外科), 池本 哲也(徳島大学 外科), 森根 裕二(徳島大学 外科), 居村 暁(徳島大学 外科), 宇都宮 徹(徳島大学 外科), 三宅 秀則(徳島大学 外科)
抄録 【背景と目的】高齢者ドナーあるいは高齢者の肝切除症例における加齢肝の再生能低下は知られているが、その詳細なメカニズムは不明である。今回我々は加齢肝における肝再生低下と加齢指標マーカーに着目し、マウスを用いた基礎的検討に加え、肝切除症例における検討を行いその関係について報告する。【方法】(1)基礎的検討:雄性balb/cマウスを用い8週齢以下を若年群(n=5)、16か月以上を高齢群(n=5)として70%肝切除を施行した。肝切除前後の加齢指標マーカー(SMP30,p16,p66,SIRT1)をreal time PCRにて測定し、肝切除後肝障害をAST,ALT,LDH, T-Bilで、肝切除術後再生を残肝体重比及びPCNA labeling indexで経時的に比較検討した。(2)臨床的検討:肝切除99例を用い60歳以下を若年群(n=45)、70歳以上を高齢群(n=54)として肝内加齢指標マーカー(SMP30,p16,SIRT1)及び肝再生関連因子(HGF,c-MET)の発現をreal time PCRにて測定した。【結果】(1)基礎的検討:肝切除前ではSMP30は高齢群で低値、p66及びp16は高齢群で高値であった。肝切除後48時間以降では高齢群で有意に肝再生が遅延し、PCNA labeling indexも低値であった。肝切除後では高齢群でSMP30が低値、p16が有意に高値であった。AST,ALT,LDH,T-Bilはいずれも高齢群で高値であり、肝切除後肝障害が高度であった。(2)臨床的検討:高齢群において肝内ではp16が高齢群で高値であり、HGF及びc-METは高齢群で低値であった。【結語】加齢肝における肝切除後の肝再生不全に関するメカニズムとして加齢指標マーカーであるSMP30及びp16が関与していると考えられた。加齢指標マーカーはその機序に関与し治療のターゲットになる可能性がある。
索引用語 加齢肝, 肝再生