セッション情報 シンポジウム1「消化器疾患と他臓器病変との関わり」

タイトル S1-04:

神経疾患に伴う胃運動機能障害

演者 杵川 文彦(さぬき市民病院 内科)
共同演者 松田 和也(松田内科医院 内科), 小林 三善(KKR高松病院 消化器内科), 井上 秀幸(香川労災病院 消化器内科), 木田 裕子(さぬき市民病院 内科), 中尾 克之(さぬき市民病院 内科), 井上 利彦(さぬき市民病院 内科), 正木 勉(香川大学 医学部 消化器・神経内科)
抄録 【目的】神経疾患においては自律神経障害に基づく消化管機能障害を合併すると考えられるが、それらを定量的に評価した報告は少ない。今回我々は、種々の神経疾患患者を対象として、胃電図を記録し、胃運動機能障害を定量的に評価するとともに、治療による変化についても解析したので報告する。【対象】i)急性炎症性ニューロパチー12例、ii)神経変性疾患8例、iii)脊髄疾患12例、iv)重症筋無力症6例、v)髄膜炎1例。【方法】ニプロ社製EGを用いて胃電図を記録し、空腹期30分、食後期30分におけるbradygastria(2.4cpm未満)、normogastria(2.4-3.6cpm)、tachygastria (3.6cpm以上)の出現頻度、食事前後の電位の変化率(power ratio;PR)について解析し、治療前後において比較検討した。【成績】i)空腹期の解析ではnormogastriaの出現頻度は74.3±8.5%で健常者と比較して有意に低下していた。治療後には89.6±5.4%となり、有意に増加した。ii)空腹期の解析ではnormogastriaの出現頻度は54.1±11.7%で健常者と比較して有意に低下していた。治療後は72.6±7.9%となり、有意に増加した。iii)空腹期の解析ではnormogastriaの出現頻度は96.2±3.8%で健常者と比較して有意差はなかった。後縦靭帯骨化症の1例では空腹期のnormogastriaの出現頻度は治療前43%、治療後77%、PRは治療前1.8、治療後4.0で治療により増加した。急性散在性脳脊髄炎の1例では空腹期のnormogastriaの出現頻度は治療前43%、治療後97%、PRは治療前2.6、治療後4.7で治療により増加した。iv)空腹期の解析ではnormogastriaの出現頻度は91.7±5.3%で健常者と比較して有意差はなかった。全例の解析では治療前後において有意な変化を認めなかったが、治療前のnormogastriaの出現頻度が低かった2例においては治療により改善した。v)空腹期のnormogastriaの出現頻度は治療前43%、治療後100%で治療により増加した。【結論】神経疾患においては胃運動機能障害の合併を念頭に置いて診療を行う必要がある。神経疾患に合併する胃運動機能障害は原疾患の治療により改善する。消化管機能検査は神経疾患に伴う自律神経障害を評価するための指標となり得る。
索引用語 神経疾患, 胃運動