セッション情報 シンポジウム2「消化器癌の早期発見」

タイトル S2-03:

SSA/P-Cancer sequenceにおけるACFの前癌病変としての意義

演者 藤野 泰輝(徳島大学病院 消化器内科)
共同演者 大塚 加奈子(徳島大学病院 消化器内科), 田中 久美子(徳島大学病院 消化器内科), 中村 文香(徳島大学病院 消化器内科), 三好 人生(徳島大学病院 消化器内科), 香川 美和子(徳島大学病院 消化器内科), 郷司 敬洋(徳島大学病院 消化器内科), 高岡 遠(徳島大学病院 消化器内科), 矢野 弘美(徳島大学病院 消化器内科), 北村 晋志(徳島大学病院 消化器内科), 宮本 弘志(徳島大学病院 消化器内科), 六車 直樹(徳島大学病院 消化器内科), 岡久 稔也(徳島大学病院 消化器内科), 井本 逸勢(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部人類遺伝学分野), 高山 哲治(徳島大学病院 消化器内科)
抄録 <背景・目的>SSA/Pは右側大腸に多く発生し、BRAF変異が高率に認められ、CIMPのマーカー遺伝子であるMINTやp16などのメチル化を認めることが報告されており、MSI陽性癌の前病変として注目されている。一方、aberrant crypt foci(ACF)は、マウスやラットの大腸発癌モデルにおける最も初期の前病変と考えられている。我々はこれまで直腸及び左側結腸のACFを観察し、ACFと腺腫さらには癌との密接な関係を見出し、ACFがadenoma-cancer sequenceの前病変である可能性を指摘した。そこで、本研究ではSSA/P患者の右側大腸におけるACFを観察し解析を行うことで、SSA/Pの前病変かどうか検討した。<対象・方法>40人のSSA/P患者及び2人のSSA/P併存癌患者の検討を行った。右側大腸にメチレンブルー散布後拡大内視鏡を用いてACFを同定・採取し、SSA/PはEMRにより切除を行った。さらに、採取検体の病理組織学的検討および遺伝子解析を行った。<結果>SSA/P患者における右側大腸のACF陽性率は97.4%(38/39)であり、健常人(13.3%,2/15)に比べ有意に高かった。同様に、SSA/P患者では平均3.95±2.14個のACFを認め、健常人(0.13±0.33個)よりも有意に多かった。また、SSA/Pの数が多いほどACF数も多いことが示された。SSA/P患者のACFは、病理組織学的に腺底部における腺管の拡張及び、腺管基部から中部までKi67の発現を認めるなど、SSA/Pと類似する所見を有していた。ACF及び、SSA/PにおけるKRAS変異率はそれぞれ13.3%(2/15)、13.3%(2/15)でありいずれも低率であった。BRAF変異率はACFで66.7%(10/15)、SSA/Pで80%(12/15)といずれも高率であった。MSIは、ACFでは全例陰性、SSA/Pでは2例のMSI-L以外は陰性であった。<結語>SSA/P患者の右側大腸に認められるACFは、病理学的、遺伝子学的にSSA/Pに類似しており、SSA/P数とACF数が有意に相関したことから、ACFはSSA/Pの前病変である可能性が示された。また、右側大腸では、B-RAF変異とメチル化が生じてACFが形成され、メチル化が蓄積してSSA/Pが形成され、最終的にhMLH1のメチル化により癌に進展するACF-SSA/P-Cancer sequenceが示唆された。
索引用語 SSA/P, ACF