セッション情報 一般演題(初期研修医)

タイトル 17:

グルコサミンによる薬物性肝障害との鑑別が困難であった急性発症型自己免疫性肝炎の1例

演者 重田 倫子(社会医療法人近森会近森病院消化器内科)
共同演者 富田 秀春(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 青野 礼(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 榮枝 弘司(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 岡田 光生(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 高松 正宏(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 市川 博源(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 近森 正康(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 斉藤 純子(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 北岡 真由子(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 村岡 朋美(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 梅下 仁(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 山本 泰正(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 大川 良洋(社会医療法人近森会近森病院消化器内科), 円山 英昭(社会医療法人近森会近森病院消化器内科)
抄録 【症例】60代女性【主訴】心窩部痛【現病歴】201X年2月中旬からグルコサミン入りサプリメントを内服していた。3月中旬に悪心、心窩部痛にて近医を受診し、血液検査でAST1980IU/I、ALT2630IU/I、T-Bil3.0mg/dl、ALP907 IU/I、γ-GTP235IU/Iと黄疸、肝胆道系酵素上昇を認め紹介入院となった。【経過】血液検査では肝炎ウイルスマーカーは陰性、CMVおよびEBVは既感染で、IgG1097mg/dl、抗核抗体40倍、抗平滑筋抗体およびLKM-1抗体陰性であった。肝組織所見は急性肝炎像で、Interface hepatitis、形質細胞浸潤、ロゼット形成も認め、急性発症型自己免疫性肝炎あるいは薬物性が疑われた。しかしグルコサミン加工食品のDLST陽性(Stimulation index218%)で、自己免疫性肝炎の国際診断基準では8点、DDW-J2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングで肝細胞障害型総スコア11点であり、この時点では薬物性肝障害を最も疑いUDCAを開始した。17病日にT-Bil15.5mg/dlと黄疸が増強する為、18病日よりPSL40mgを開始した。その後徐々に肝機能は改善傾向となりPSLを漸減し、第60病日にはAST14IU/I、ALT18IU/I、T-Bil1.2mg/dlまで改善し、第73病日にはAST18IU/I、ALT16IU/I、T-Bil0.7mg/dlとなり、PSLを中止した。しかし第123病日に初診時と同様の症状が出現し、AST1125IU/I、ALT1296IU/I、T-Bil1.7mg/dlと上昇を認め再入院となった。この経過より自己免疫性肝炎が強く疑われ、ステロイドパルス療法を施行しPSL内服を開始。その後肝機能は改善し、現在外来で漸減中である。【考察】本症例はIgG正常、自己抗体低力価陽性で、グルコサミン加工食品によるDLST陽性の為、当初薬物性肝障害を疑っていた。その後PSLを中止してから再燃したため自己免疫性肝炎が強く疑われ、薬物性肝障害を誘因として発症した自己免疫性肝炎、あるいは急性肝炎様に発症した自己免疫性肝炎(DLSTは偽陽性)のいずれかと判断している。薬剤服用歴があり、自己抗体陰性、IgG正常の肝障害においても、鑑別診断として自己免疫性肝炎を常に念頭に置く必要があると考えられた。
索引用語 自己免疫性肝炎, 薬物性肝障害