セッション情報 シンポジウム1「消化器疾患と他臓器病変との関わり」

タイトル S1-05:

家族性大腸腺腫症(FAP)における十二指腸併存病変の検討

演者 谷内田 達夫(香川大学 医学部 消化器・神経内科DELIMITER国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)
共同演者 野中 哲(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 中島 健(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 中村 佳子(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 小田 一郎(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 小原 英幹(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 森 宏仁(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 正木 勉(香川大学 医学部 消化器・神経内科)
抄録 [背景・目的]十二指腸癌は、大腸癌以外のFAPの主要な死因であるとされており、FAPにおける十二指腸病変の現況とともに適切なサーベイランスについて検証した。[方法]1997年以降、上部消化管内視鏡検査(EGD)が施行されたFAP80例を対象に、患者背景、十二指腸病変の内視鏡診断、治療法、長期経過を検討した。[結果]患者背景は、男性:女性=52:28、密生型:非密生型=11:69、大腸全摘術施行85%(68/80)。FAP80例中、初回EGDでの十二指腸病変の併存は43例(54%)、乳頭部限局型2例。今回の検討では直視鏡で観察困難な乳頭部限局型2例を除く41例を対象とし検討した。初回診断は、腺腫40例、癌、腺腫の同時多発1例。発生部位は下行脚35例(85%)、球部1例 (2%)、十二指腸多発病変5例(12%)。治療法は、十二指腸腺腫40例中、経過観察36例、EMR4例。経過観察36例中、発癌3例、EMR1例、経過観察2例(妊娠、宗教的理由各々1例)。長期経過の検討では、FAP80例中6例が死亡し、直腸癌3例、デスモイド腫瘍1例、死因不明1例、小腸癌に対する化学療法による治療関連死1例であった。EMR症例含めたFAP80例において十二指腸癌死を認めなかった。分類が可能だった十二指腸腺腫29例中、初回指摘時のポリープの数、大きさ、病理診断を考慮したSpigelman病期は、I期0例(0%) 、II期5例(17%) 、III期16例(55%), IV期8例(27%)で、経過観察中の発癌例は、I期・II期・III期では見られなかったが、IV期では8例中4例(50%)で認められた。観察間隔は、12ヶ月毎22例、6ヶ月毎11例であった(観察期間中央値は8.5年)。[結論] 定期的なEGDとそれに基づく適切な治療を行えば、十二指腸病変による死亡は認められず、十二指腸腺腫および癌がFAP患者の予後を増悪させる因子にはならないと考えられた。また、Spigelman分類による重症度診断は、十二指腸腺腫を経過観察していくうえで有用であることが示唆された。
索引用語 家族性大腸腺腫症, 十二指腸腺腫