セッション情報 一般演題(後期研修医)

タイトル 01:

広範な潰瘍病変を呈したヘルペス性食道炎の1例

演者 水川 翔(香川県立中央病院 消化器内科)
共同演者 稲葉 知己(香川県立中央病院 消化器内科), 河井 裕介(香川県立中央病院 消化器内科), 榊原 一郎(香川県立中央病院 消化器内科), 泉川 孝一(香川県立中央病院 消化器内科), 石川 茂直(香川県立中央病院 消化器内科), 三好 正嗣(香川県立中央病院 消化器内科), 和唐 正樹(香川県立中央病院 消化器内科), 河合 公三(香川県立中央病院 消化器内科)
抄録 【症例】80歳代女性【現病歴、治療経過】 2013年4月に全身倦怠感にて当院受診。PET―CTにて胸部上部食道の壁肥厚を認めた。上部消化管内視鏡検査では胸部上部食道に広範な浅い地図状潰瘍を認め、下部食道には類円形の打ち抜き様の潰瘍を認めた。血液検査にてCRP上昇および血沈の亢進を認め、RF,MMP-3,抗ガラクトース欠損IgG,MPO-ANCAの上昇を認めた。腓腹神経生検および皮膚生検を施行し、結節性多発動脈炎と診断した。食道潰瘍辺縁の生検病理診断では、扁平上皮細胞の核の腫大、多核化、スリガラス様の核内封入体を認め、抗HSV抗体による免疫組織学的検討でも陽性であり、ヘルペス食道炎と診断した。ヘルペス性食道炎に対する抗ヘルペス剤(バラシクロビル1000mg/日)を投与した後のステロイド開始を計画したが結節性多発動脈炎の状態が不良にて,ステロイド療法(mPSL250mg×3日間、PSL20mg/日投与)と同時投与となった。バルトレックス投与は腎機能障害のため7日間投与となり、投与中止後 4日目に上部消化管内視鏡検査施行したところ潰瘍は治癒しており生検にても特異的な所見は認めなかった。結節性多発動脈炎に関しては、ステロイドにてCRPは陰性化しMPO-ANCAも低下し改善した。【考察】ヘルペス食道炎は癌の末期などの免疫不全状態や後天性免疫不全症候群などのimmunocompromised hostに見られる日和見感染であることがほとんどであるが免疫不全状態のないimmunocompent hostの報告もある。ヘルペス性食道炎の病変としては,類円形の打ち抜き様の小潰瘍が典型的な像として知られており、健常人にも一過性に生じうる。一方で,本症例のような広範な浅い地図状の潰瘍を呈する場合もあり、免疫低下患者に多いとされているが適切な治療選択のために病像として認識しておく必要がある。
索引用語 ヘルペス食道炎, 地図状潰瘍