セッション情報 ビデオシンポジウム「消化器領域の診断と治療における新展開」

タイトル VS-09:

十二指腸静脈瘤に対する集学的治療について

演者 村上 匡人(村上記念病院 内科)
共同演者 近森 文夫(国吉病院消化器外科), 西野 圭一郎(村上記念病院 内科), 五島 彩(村上記念病院 内科), 村上 重人(村上記念病院 内科), 高岡 洋子(村上記念病院 内科), 森 公介(村上記念病院 内科), 村上 凡平(村上記念病院 内科)
抄録 症例1は50歳、男性。B型肝硬変。胃静脈瘤治療歴、十二指腸静脈瘤出血に対する経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)の既往歴あり。内視鏡検査とCTにて十二指腸静脈瘤ならびに脾腫と胸腹水を認めた。部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行後もタール便が持続し、経回結腸静脈的塞栓術を施行した。供血路は門脈右枝と膵十二指腸静脈で排血路は右副腎静脈であった。全身状態回復後に逆行性塞栓術(RTO)を追加施行した。症例2は49歳、女性。アルコール性肝硬変。内視鏡検査にて赤色栓により一時止血された十二指腸静脈瘤を認め、CTにて十二指腸静脈瘤ならびに脾腫を認めた。緊急にPTOを施行した。供血路は膵十二指腸静脈で排血路は右卵巣静脈であった。翌日バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を追加施行した。その後食道静脈瘤出血をきたしEVLにて止血したが、21日後にPSEを追加した。症例3は69歳、男性。C型肝硬変。下十二指腸角付近に内腔を覆うほどの巨大な十二指腸静脈瘤を認めた。PSEを施行し1ヵ月後に B-RTOを試みたが、静脈瘤は描出されなかった。カテーテルを留置したまま、内視鏡的に80%濃度のエチルシアノアクリレート(ECA)を直接静脈瘤に注入し硬化療法を行い。静脈瘤内をECAで充満させた。2日後B-RTOのカテーテルを抜去した。1週間後の追加治療時には静脈瘤のほとんどが硬化されていた。症例4は68歳女性、C型肝硬変。55歳時、胃静脈瘤破裂に内視鏡治療。十二指腸静脈瘤破裂に対し前医でEVL後当院に紹介された。内視鏡では十二指腸下行脚に結節状の静脈瘤を認めた。CT上、十二指腸付近に門脈本幹から供血路と思われる側副血行路を認めた。PSEを施行。同時に経静脈的に排血路を検索したが、同定はできなかった。PSE3週間後、PTPを施行し供血路は膵十二指腸静脈と診断しエタノールおよびマイクロコイルを用い塞栓した。塞栓後の造影では側副血行路はほぼ描出されず内視鏡でも十二指腸静脈瘤の消失を認めた。十二指腸静脈瘤の血行動態は複雑で血行動態を把握しつつ、さまざまな治療を駆使する必要がある。PSEは血小板数増加とともに門脈圧の低下にも役立ち有効であった。
索引用語 十二指腸静脈瘤, 集学的治療