セッション情報 一般演題(初期研修医)

タイトル 45:

NBI拡大観察が診断に有用であった扁平上皮癌合併肛門部尖圭コンジローマの1例

演者 大野 彰久(松山赤十字病院 臨床研修センター)
共同演者 川崎 啓祐(松山赤十字病院 胃腸センター), 蔵原 晃一(松山赤十字病院 胃腸センター), 大城 由美(松山赤十字病院 病理), 河内 修司(松山赤十字病院 胃腸センター), 八板 弘樹(松山赤十字病院 胃腸センター), 森下 寿文(松山赤十字病院 胃腸センター), 長末 智寛(松山赤十字病院 胃腸センター), 阿倍 洋文(松山赤十字病院 胃腸センター), 澤野 美由紀(松山赤十字病院 胃腸センター), 渕上 忠彦(松山赤十字病院 胃腸センター)
抄録 症例は52歳男性。1ヵ月持続する血便、下痢を主訴に当院胃腸センターを受診。大腸内視鏡検査で肛門管に隆起性病変を認め、精査加療目的に入院となった。身体所見、血液検査、上部消化管内視鏡検査、胸腹部造影CTでは明らかな異常を認めなかった。大腸内視鏡検査では肛門管に20mm大の白色顆粒状を呈した隆起性病変を認めた。NBI拡大観察ではsurface patternは消失し、コイル状にねじれを形成した毛細血管が観察された。生検では濃縮した核と空胞化した細胞質を有する扁平上皮細胞を認め、一部で扁平上皮の肥厚は高度で、核の大小不同や配列の不整などの異形を全層性に認めており、P53免疫染色では陽性細胞が全層性に多く存在し、上皮内癌相当の病変を伴っていた。以上よりSquamous intraepitherium neoplasia high grade(carcinoma in situ) with condyloma acuminatumと診断し、放射線化学療法を施行した。3か月後の大腸内視鏡検査では病変の消失を確認した。尖圭コンジローマは男女の外性器に好発する良性疾患であり、human papilloma virusの直接感染によって引き起こされる感染性病変である。特に肛門周囲や肛門縁から歯状線までの肛門管内壁にみられるものを肛門部尖圭コンジローマと言われ、近年NBI拡大観察を含めた内視鏡像の報告が散見される。過去の報告での内視鏡所見は、通常観察では乳頭腫様の隆起を呈し、表面構造は白色顆粒状で大小の病変が集簇しているものが多く、NBI拡大観察ではヘアピン状あるいはコイル状にねじれを形成した毛細血管が観察される。また、肛門部尖圭コンジローマの悪性化の報告は1983年~2012年の医学中央雑誌で検索したところ、本邦報告例は自験例を含め5例のみであった。特に肛門管に限局した悪性化症例は自験例を含め3例のみと極めて稀であり、いずれも病変径は20mm以上と比較的大きく、浸潤癌は認めず、上皮内腫瘍であった。今回我々は特徴的な内視鏡像を呈し、NBI拡大観察が診断に有用であった扁平上皮癌合併肛門部尖圭コンジローマの1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 尖圭コンジローマ, NBI