セッション情報 シンポジウム2「消化器癌の早期発見」

タイトル S2-05:

香川県下10施設における肝細胞癌実態調査結果から検討した非B非C肝細胞癌に対する早期発見への囲い込み

演者 谷 丈二(香川大学 医学部 消化器・神経内科)
共同演者 前田 瑛美子(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 野村 貴子(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 三好 久昭(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 米山 弘人(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 森下 朝洋(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 出口 章広(香川大学 医学部 消化器・神経内科), 樋本 尚志(香川大学 医学部 総合診療部), 正木 勉(香川大学 医学部 消化器・神経内科)
抄録 近年、HBVやHCVを背景にもたない非ウイルス性の肝細胞癌(NBNC型肝細胞癌)が増加しており、香川県下10施設における肝細胞癌の実態調査を行い、NBNC型肝細胞癌の背景因子、特徴、予後などについて検討を行ったので報告する。対象は2000年から2009年までの間に香川県下の基幹病院10施設を受診した初発肝細胞癌患者1006例で、年齢中央値は70歳、男性678例、女性328例である。これらを成因別に分類するとHBV123例(12.4%)、HCV665例(66.1%)、alcohol65例(6.5%)、自己免疫性肝疾患9例(0.9%)、NBNC127例(12.7%)、その他15例(1.5%)であった。男女比はHCV群およびNBNC群では他群に比べて女性の比率が高かった。前半の5年間と後半の5年間で成因の推移を比較するとHBV群HCV群は共に減少しており、alcohol群・NBNC群は増加していた。背景因子について比較すると平均年齢はHCV群およびNBNC群ではやや高齢であった。BMIの平均値はNBNC群でやや高値であった。糖尿病の合併率を比較するとalcohol群・NBNC群は高率であった。初診時の腫瘍径(中央値)を比較するとNBNC群では有意差を認め大きかった。それぞれの群におけるstage IIIおよびIV期の症例の割合を比較すると、進行期の占める割合はHBV群で最も高かった。腫瘍マーカー(中央値)ではAFPに関しては特に差を認めなかったが、PIVKAIIはHBV群98.0mAU/ml、HCV群56.5 mAU/ml、alcohol群277.5 mAU/ml、NBNC群343.0mAU/mlとalcohol群、NBNC群で高値であった。また、PIVKAIIの陽性率を比較するとNBNC群およびalcohol群ではHBV群およびHCV群に比して高くなっており、stage Iの症例だけを比較してもNBNC群およびalcohol群では高値であった。予後に関しては、有意差はないもののNBNC群では5年生存率が43%と最も悪かった。以上のことからNBNC群では高齢、女性、肥満、糖尿病の合併が危険因子としてあげられ、これらの危険因子を有する群では重点的な画像診断が必要であり、PIVKAIIが早期発見に有用である可能性が示唆された。
索引用語 NBNC, PIVKA