セッション情報 一般演題

タイトル 03:

新規RNA結合蛋白質による食道扁平上皮がんの発がん機構の解明

演者 増田 清士(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 人類遺伝学分野)
共同演者 西田 憲生(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 ストレス制御医学分野), 六反 一仁(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 ストレス制御医学分野), 井本 逸勢(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 人類遺伝学分野)
抄録 【目的】RNA結合蛋白質は、遺伝子の転写後調節を行う重要な因子の一つであり、細胞増殖、アポトーシス、ストレス応答などを広範囲に制御している。また、一部のRNA結合蛋白質は大腸がんなどのがん組織で高発現しており、発がんや遠隔転移・薬剤耐性の誘導に関与していることが示唆されている。今回我々は、食道扁平上皮がんにおいてがん組織特異的に発現する新規RNA結合蛋白質(Squamous cell carcinoma Specific Protein 1; SSP-1)を見いだした。【方法】食道がん手術症例(T1: 10例、T3: 10例)を対象とし、SSP-1および細胞増殖マーカーであるKi67の発現を免疫組織化学染色で評価した。また、正常組織を搭載したTissue arrayを用いて、年齢(young: 0~30歳、middle: 31~60歳、old: 61歳以上)とSSP-1発現の関連性を検討した。【結果】SSP-1は、周辺の正常扁平上皮部に比べ進行食道扁平上皮がん組織で核および細胞質に強い発現を認め、SSP-1の発現上昇に伴ってKi67陽性細胞数が有意に増加していた。さらに高分化型扁平上皮がんに比べ、低分化型扁平上皮がんでSSP-1の発現が増加する傾向が見られた。また、SSP-1は早期食道がん組織でも高発現しており、SSP-1蛋白質発現と病期との相関は認められなかった。興味深いことにSSP-1は異形上皮病変で中等度~高発現しており、発がんやがんの進展に関与することが示唆された。一方、正常食道扁平上皮ではSSP-1は傍基底層細胞の核内でのみ発現しており、年齢とともに発現が減少する傾向が見られた。【結論】以上のことから、SSP-1は発がんやがん進展を促進することが示唆され、新規治療標的となる可能性があると考えられた。また、SSP-1は新規診断マーカーとして有用であると考えられ、現在さらに解析を進めている。
索引用語 RNA結合蛋白質, 食道扁平上皮がん