セッション情報 一般演題(後期研修医)

タイトル 24:

膵癌化学療法中にガス産生肝膿瘍の腹腔内穿破を来した1例

演者 川田 愛(高知赤十字病院 内科)
共同演者 甫喜本 憲弘(高知赤十字病院 外科), 小島 康司(高知赤十字病院 内科), 中山 瑞(高知赤十字病院 内科), 内多 訓久(高知赤十字病院 内科), 岡崎 三千代(高知赤十字病院 内科), 岩村 伸一(高知赤十字病院 内科)
抄録 患者は67歳女性。既往歴は虫垂炎術後以外に特記事項なし。2013年3月から食欲不振、倦怠感、腰背部痛、体重減少があり、他院受診。肝機能障害、膵酵素上昇があり精査治療目的に当院紹介となった。その後の精査にて膵頭部癌、多発肺転移と診断した。StageIVbであり化学療法の方針とした。黄疸は認めなかったが肝胆道系酵素の上昇があり、ERCにて中部から下部胆管の狭窄所見を認めた。膵癌の胆管浸潤と判断しプラスチックステントを留置後は、肝胆道系酵素は速やかに低下した。4月よりGEM1000mg/m2で化学療法を開始した。投与後骨髄抑制(白血球数grade1、ヘモグロビンgrade2、血小板数grade1)を認めたが、特にその他問題なく経過しday8の投与を行った。しかしday14に腹痛が出現し、急激に全身状態は悪化した。腹部CTで、肝表面のfree airと化学療法施行前には認めなかった肝左葉の低吸収域を認めた。肝の低吸収域は肝膿瘍もしくは膵癌の肝転移を考えたが、free airの原因は癌性疼痛に対してNSAIDs内服中であったため上部消化管穿孔を疑い、同日緊急開腹術を行った。術中所見では消化管に明らかな穿孔部位はなく肝膿瘍の穿破が疑われ、腹腔内ドレナージ、肝縫縮術を行った。術前の血液培養からはEnterobacter cloacaeAeromonas hydrophilla groupClostridium perfringensが、術中に採取した腹水培養からはEnterobacter cloacaeが分離された。術後は抗生剤投与・ICU管理にて全身状態は改善した。感染経路は明らかではないがcompromised hostであり、消化管経由で嫌気性菌の複合感染を起こし血行性感染により肝膿瘍を形成し、腹腔内穿破を来したと考えられた。血液培養の分離菌のうち、特にAeromonas敗血症の死亡率は30~70%と高率といわれている。膵癌化学療法中にガス産生肝膿瘍の腹腔内穿破を来した1例を経験したので報告する。
索引用語 肝膿瘍, 嫌気性菌