セッション情報 一般演題(初期研修医)

タイトル 46:

著明な石灰化及び骨化を伴う多発肝転移をきたした直腸癌の1剖検例

演者 梅原 佳奈子(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学)
共同演者 香川 美和子(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 武原 正典(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 松本 友里(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 田中 久美子(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 高場 梓(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 郷司 敬洋(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 高岡 遠(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 矢野 弘美(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 北村 晋志(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 宮本 弘志(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 六車 直樹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 岡久 稔也(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学), 東島 潤(同消化器・移植外科), 島田 光生(同消化器・移植外科), 坂下 直実(同人体病理学), 高山 哲治(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学)
抄録 症例は60歳代女性。子宮筋腫手術の既往あり。腹痛を主訴に近医を受診。CTにて肝内に多発する腫瘤を指摘され、精査加療目的に2009年2月当科に紹介。血液検査では軽度の肝機能障害とCEA、CA19-9の上昇を認めた。下部消化管内視鏡検査では直腸Rsに凹凸不整な隆起性病変を認め、管腔狭窄を伴っていた。病変部の生検結果は中分化型腺癌であった。胸腹部CTでは、肝内には著明な石灰化を伴う大小不同の腫瘤を多数認めるとともに、S状結腸の壁肥厚及び周囲リンパ節腫大、大動脈周囲リンパ節腫大を認めた。以上より、直腸癌、多発肝転移、リンパ節転移(T3N3M1, Stage4)と診断した。K-ras遺伝子は野生型であった。同年2月下旬 開腹下高位前方切除術を施行し、3月よりmFOLFOX (+Bevacizumab)にて化学療法を行った。3コース後にPRが得られたが、21コース後にPDとなり、以後 FOLFIRI (14コース)、Panitumumab (10コース)等による治療を行った。その間、徐々に肝転移巣が増大するとともに、石灰化の領域及び程度も増強し、2011年1月に肝不全で死亡した。死亡後、家族の同意を得て病理解剖を行った。肉眼所見では黄疸、大量の腹水とともに高度の多発肝転移が認められた。組織学的には、肝臓には広範な壊死を伴う転移巣を多数認め、壊死巣や硝子化を伴う線維化病巣の周囲には広範囲に石灰化と骨化を認めた。また、骨化病巣の周囲には骨芽細胞が認められた。大腸癌の肝転移巣に石灰化をきたす例は散見されるが、骨化する例は稀である。骨外性の骨化病変の形成には、線維芽細胞の骨芽細胞分化が必須であると考えられている。この骨芽細胞分化前の線維芽細胞の由来として、1)上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT)、2)末梢血幹細胞、3)もともと肝に存在する線維芽細胞のいずれかが考えられる。本例では、このいずれの機序で線維芽細胞から骨芽細胞が形成され、骨化をきたしたのか、現在免疫染色等により検索中である。今回われわれは診断時より著明な石灰化を伴う肝転移をきたした直腸癌の1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 転移性肝腫瘍, 石灰化