セッション情報 一般演題(後期研修医)

タイトル 13:

Trastuzumab単剤療法が著効した切除不能進行胃癌の1例

演者 寺前 智史(徳島大学病院消化器内科)
共同演者 宮本 弘志(徳島大学病院消化器内科), 大塚 加奈子(徳島大学病院消化器内科), 三好 人正(徳島大学病院消化器内科), 香川 美和子(徳島大学病院消化器内科), 高場 梓(徳島大学病院消化器内科), 谷口 達哉(徳島大学病院消化器内科), 郷司 敬洋(徳島大学病院消化器内科), 北村 晋志(徳島大学病院消化器内科), 矢野 弘美(徳島大学病院消化器内科), 仁木 美也子(徳島大学病院消化器内科), 佐藤 桃子(徳島大学病院消化器内科), 六車 直樹(徳島大学病院消化器内科), 岡久 稔也(徳島大学病院消化器内科), 井本 逸勢(徳島大学医学部人類遺伝学分野), 澤  靖彦(澤内科胃腸科), 高山 哲治(徳島大学病院消化器内科)
抄録 【症例】患者は78歳、男性。主訴は下腿浮腫。約3週間前より足のむくみを自覚して近医を受診。腹部エコーで多発肝腫瘤、上部消化管内視鏡検査(GF)にて幽門部に腫瘤を認め、胃癌及び多発肝転移の疑いで当科に紹介された。身体所見では両側下腿浮腫を認めた。血液検査では、軽度の貧血、低アルブミン血症、肝胆道系酵素の上昇を認めた。腫瘍マーカーは、CEA 9850ng/ml、CA19-9 5270U/mlと著増していた。CT検査では肝に多発する腫瘤と、幽門部下部に約20mmのリンパ節腫大を認めた。GFでは幽門部に約4cmの3型腫瘤を認め、生検にてtubular adenocarcinoma (tub1-2) であった。以上より、胃癌、多発肝転移、リンパ節転移(T3N1M1,stageIV)と診断した。HER2染色は3+であった。本例は、高齢者でありCcrが低値であったことから、cisplatinを含む治療は困難と判断し、当科でpilot studyとして行っているDocetaxel(DTX)+S-1+Trastuzumab(Tmab)(DS-T)療法を行った。しかし治療開始後、顔面に滲出液を伴うびらん、手掌・手背に滲出液を伴う暗紅斑が出現し、皮膚生検では薬疹が強く疑われた。原因薬剤として、S-1またはDTXが考えられたため、DS-T療法は2コースで中止し、以後 Tmab単剤で治療を行った。Tmab単剤で2コース終了後には、RECIST評価により25%、5コース終了後には44%縮小し、PRと判定した。全経過を通して、grade 2以上の副作用を認めなかった。現在7コース終了し、PRを維持している。【考察】Tmabは、5-FU/ capecitabine+cisplatin+Tmab療法としてHER2陽性進行胃癌に対する標準治療として用いられているが、胃癌に対するTmab単剤の有効性を調べた臨床試験は行われていない。我々がPubMedで検索した限り、Tmab単剤で治療した胃癌症例は2例報告されており、いずれもTmabは有効であった。本症例においてもTmab単剤治療は有効であり、胃癌においても乳癌と同様にTmab単剤療法が有効であることが示唆された。今後、切除不能進行胃癌を対象にTmab単剤療法の臨床試験を行い、有効性を検証することが期待される。
索引用語 胃癌, Trastuzumab