抄録 |
2013年2月に広くヘリコバクターピロリ陽性患者に対して、除菌療法が保険適応となり、検診で来院された方に対する対応方法も考慮すべき時代になった。それまでは、可能性のある人には、毎年の検診での上部消化管内視鏡検査を受けるように勧めていた。しかし、今回の保険適応を機会にその可能性のある方には告げて、希望者には引き続いての保険診療の中でのヘリコバクターピロリ検査、さらに、除菌療法を行うようにしている。 今回、保険適応をきっかけに、ABC検診も出来るようにした。当院でのABC検診の運用方法としては、上部消化管内視鏡検査もしくは胃透視はした上で、ABC検診をヘリコバクターピロリ感染の有無、萎縮性胃炎の進行を目安とした胃癌発症リスクの大まかな説明の材料としてのオプション検査として使用している。 今回は、検診で上部消化管内視鏡検査とABC検診を行った方で、内視鏡にてヘリコバクターピロリ感染が予見できるかをふまえABC検診の有用性について考えた。 対象は当院でABC検診を導入し、上記2つの検査を行った、2013/5/22から9/9までの22例とした。 平均年齢は38.4才、判定Aであったのが14例であった。13例は萎縮を認めなかった。残りの1例もC-1程度の萎縮で、問診で過去に除菌療法を受け成功していることが判明した。判定Bが5例、Cが3例、Dはなかった。その8例では全例内視鏡所見で萎縮の指摘をしており、C-2が2例、C-3が2例、O-1が4例であった。他の内視鏡所見では粘調な粘液の存在が判定に有用であると思っていたが8例中4例でははっきりしなかった。 今回は、内視鏡での萎縮の有無できれいにヘリコバクターピロリ陽性、陰性が分かれたが、十二指腸潰瘍を背景にした方で萎縮がはっきりしないような症例の経験もあり、症例を重ねる必要があると思われた。また、陽性の可能性を示唆するような鳥肌状胃粘膜や過形成ポリープの存在、体部の腫大した雛壁、黄色腫の存在なども有用だと思われるが、その感度や陰性の可能性の高いと言われているRACの存在、胃底腺ポリープの存在、表層性胃炎の変化、塩酸ヘマチンの存在などの特異度も今後検討したい。 |