セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研16:

敗血症性ショックを起こしたHypermucoviscosity phenotypeのKlebsiella pneumoniaeによる肝膿瘍の1例

演者 次郎丸 高志(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科)
共同演者 小田 圭子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 上野 新子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科)
抄録 【症例】 70歳台 女性
【主訴】 意識障害
【現病歴】 全身倦怠感出現し、翌日より意識レベルの低下を認めたため救急車で来院した。
【現症】 JCSII-10、心拍102/分、血圧71/49mmHgとショック状態であった。胸腹部、神経学的所見に異常を認めなかった。
【検査成績】 白血球23500/μl、CRP14.1mg/dlと上昇を認めた。USで肝左葉に低エコー性の径60mm腫瘤を認め、CT動脈相で辺縁部が境界不明瞭に造影される低吸収腫瘤として描出された。血液培養と後日施行した膿瘍穿刺液よりK.pnuemoniaeを検出した。String test陽性でりHypermucoviscosity phenotypeと診断した。
【臨床経過】 敗血症性ショックを合併した肝膿瘍と診断し、カテコラミンとmeropenem の投与を開始した。ショック離脱後に経皮的膿瘍ドレナージを施行したが、その後も解熱せず炎症反応も改善しないため、再度CTを施行したところ膿瘍の拡大を認めた。ドレナージが不十分と判断し、拡大部に2本目のチューブを挿入した。以後、解熱し、炎症反応も改善、膿瘍は縮小した。後日行ったK.pneumoniaeの遺伝子解析で、Hypermucoviscosity phenotype に特徴的な、莢膜外ポリサッカライドの網の合成に必須であるmagA遺伝子、莢膜外ポリサッカライド合成のpositive regulatorである rmpA遺伝子が検出された。
【考察】 本菌は1990年台にアジアで報告され、近年日本でも報告が増えている。通常のK.pneumoniaeより病原性が強く重症化しやすく、肝膿瘍、髄膜炎、膿胸、眼内炎等の重症感染症を起こしやすいことが問題となっている。MagA、 rmpAなどでエンコードされる莢膜polysaccharideが病原性に関与しており、菌体外多糖の網を作り液性免疫に抵抗性となるため、重症化しやすいと推測されている。
【結語】 K.pnuemoniae は肝膿瘍の代表的起炎菌であるため、今後毒性の強いHypermucoviscosity phenotypeによる肝膿瘍の増加に注意する必要がある。本菌の判別は簡便なstring testで可能であり、早期に重症度を予測するうえで有用と考えられる。
索引用語 Klebsiella pneumoniae, Hypermucoviscosity phenotype