セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 001:

自己免疫性肝炎を合併した長期寛解潰瘍性大腸炎の1例

演者 松本 章子(長崎成人病センター消化器内科)
共同演者 山川 正規(長崎成人病センター消化器内科), 山島 美緒(長崎市民病院消化器内科), 堤 卓也(長崎市民病院消化器内科)
抄録 【症例】80歳女性【主訴】全身倦怠感、黄染【既往歴】56歳時 左大腿骨頭壊死にて人工股関節置換術 輸血歴:複数回【生活歴・家族歴】特記事項なし【現病歴】1976年に潰瘍性大腸炎(全結腸炎型)を発症した。再燃寛解型であり、再燃時にはステロイド治療が行われた。治療経過が長く、ステロイド総投与量は不明である。1998年に左大腿骨頭壊死を発症したため、ステロイドは中止となった。2000年より当院外来フォローとなり、2004年以降臨床的寛解を維持していた。治療はSASP 3000mg/day内服のみであった。2012年9月12日より食欲低下、全身倦怠感が出現し、17日に皮膚黄染を自覚。19日に当院外来を受診し、精査加療目的にて緊急入院となった。【入院後経過】入院時の一般血液検査では著明な肝胆道系酵素の上昇を認めた。画像上は軽度の肝脾腫を認めたが、胆管系の異常や胆石は認めなかった。一方、免疫血清学的検査の中でIgG 2192mg/dl、 抗核抗体320倍であり、AIHスコア14点と自己免疫性肝炎を強く疑った。肝機能は自然改善傾向にあり、10月1日に肝生検を実施した。病理結果は形質細胞やリンパ球優位の強い炎症細胞浸潤とinterface hepatitisの所見を認めた。肝生検後のAIHスコア18点であり、自己免疫性肝炎と確診した。ステロイドによる副作用の既往があること、高齢であり感染症のリスクが高いこと、肝機能は自然改善傾向にあることを考慮し、ウルソ600mg/day内服での治療とした。肝機能がほぼ正常化した10月25日に退院。現在に至るまで肝機能悪化は認めていない。【結語】潰瘍性大腸炎の腸管外合併症としての肝疾患は5%前後の頻度で認めるが、内訳をみると脂肪肝やPSCの報告が主体である。しかし欧米の報告ではAIHの16%にUC合併を認め、また、AIHの合併とUCの病勢は必ずしも一致しないとの報告もみられる。今回我々は自己免疫性肝炎を合併した長期寛解潰瘍性大腸炎の1例を経験したので、文献的考察を踏まえて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎腸管外合併症, 自己免疫性肝炎