セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研32:

αグルコシダーゼ阻害薬投与後に発症した腸管嚢胞様気腫症の1例

演者 櫻木 俊秀(公立学校共済組合九州中央病院臨床研修医)
共同演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 畑田 鉄平(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 守永 晋(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
抄録 症例は61歳、男性.高血圧で内服治療中、54歳時に近医で糖尿病を指摘され、gliclazide(グリミクロン®)とmetformin(メルビン®)を開始した.60歳時に血糖コントロール不良のため当院紹介となり、pioglitazone (アクトス® )を併用したが効果不十分だった.6ヶ月前にvoglibose (ベイスン® )を追加した後、3ヶ月前から徐々に腹部膨満感が出現し、血糖コントロールも不良のため当院糖尿病内科へ入院となった.BMI31で腹囲100cmだが腹部に腫瘤や圧痛なく、検査所見でもHbA1c8.4%だが脂肪肝以外には血液生化学や甲状腺ホルモンに異常を認めなかった.大腸内視鏡検査では上行結腸から横行結腸に多発する多房状の柔らかい粘膜下隆起を認めた.表面には発赤が散在し、拡張した血管が透見された.腹部骨盤部CT検査で病変内部は気体密度であり、腸管外や他の部位には異常を認めなかった.同日に注腸造影検査を施行したが、上行結腸に憩室が多発している以外に他の病変は認めなかった.以上より腸管嚢胞様気腫症と診断し、発症誘因と思われるベイスン®は中止した.食事療法の再教育で血糖は安定し退院となった.4ヵ月後の大腸内視鏡検査で病変は消失しており、腹部症状もなくCT検査でも異常は認めなかった.ベイスン®を含むαグルコシダーゼ阻害薬(aGI)は小腸内での二糖類の分解を妨げることで糖の吸収を抑制し、食後高血糖を改善する効果がある.一方、大腸内へ移行した二糖類が腸内細菌により発酵し、大腸ガスが増加する副作用がある.腸管嚢胞様気腫症は膠原病や化学ガスなどを原因とする稀な疾患であるが、近年aGIを誘因とする報告が増加している.早期に発見すれば薬剤中止のみで改善する予後良好な疾患であるが、進行例では出血や腹腔内遊離ガスのため過大手術が行われる場合があり注意が必要と考え報告する.
索引用語 腸管気腫症, αグルコシダーゼ阻害薬