セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 039:

Dieulafoy潰瘍による消化管出血の経過中に早期胃癌が発見されたHelicobacter pylori感染合併肥厚性胃炎の1例

演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
共同演者 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 守永 晋(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 畑田 鉄平(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 北川 大(公立学校共済組合九州中央病院外科), 峰 真理(公立学校共済組合九州中央病院病理), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
抄録 症例は54歳、男性.生来著患なく検診歴はない.仕事中に意識喪失し当院救急搬入された.多量のタール便が出現し緊急内視鏡を施行した結果、胃体中部大弯後壁にDieulafoy型の出血性潰瘍を認めクリップにて止血処置を行った.第2病日の内視鏡検査で活動性出血は認めなかったが、胃底腺領域の皺襞は腫大し粘膜は粗大顆粒状であった.肥厚した皺襞には小さなびらんが散在し、体下部後壁には欠損治癒状の不整潰瘍を認めた.リンパ腫鑑別のため生検を施行したが異型細胞は認めず、腹部造影CTでも血行異常や他臓器疾患は認めなかった.合計6単位の輸血を要したが抗潰瘍治療で軽快し退院した.Helicobacter pylori(HP) 陽性のため一次治療、二次治療を行ったが除菌できず、2ヶ月後、4ヵ月後、17ヶ月後の内視鏡検査でも肥厚性胃炎の所見に変化なかった.血清アルブミン値は一時3.3g/dLと低下したが、rabeprazole20mgを継続後は正常化した.30ヵ月後の内視鏡検査にて肥厚性胃炎の所見に著変はなかったが、体下部後壁の瘢痕部に褪色調顆粒状隆起が出現しており、生検にて高分化腺癌の診断であった.HP感染に伴う肥厚性胃炎を背景とした多発癌を念頭に14個の生検を行ったが他に腫瘍性病変は認めなった.三次除菌と内視鏡切除も提案したが、胃全摘術による発癌母地も含めた完全切除を希望され手術を行った.組織学的に巨大皺襞は胃底腺の著明な肥厚と粘膜下層に及ぶ拡張した嚢胞状腺管から成り、拡張血管を伴う粘膜下層の線維化と中等度の慢性炎症細胞浸潤を認めた.術前指摘された癌は2cmのIIa型高分化腺癌(tub1, ly0, v0)で粘膜内に限局しており、全割標本の検索を行ったが他に腫瘍組織は認めなかった.自験例はHP感染肥厚性胃炎に伴うDieulafoy潰瘍と発癌経過を観察できた点で貴重と考え報告する.
索引用語 胃癌, 肥厚性胃炎