セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 070:

肝性胸水発症後に多発性の肝偽小葉壊死を来した肝硬変の1剖検例

演者 道免 和文(国家公務員共済組合連合会千早病院 内科)
共同演者 田中 博文(国家公務員共済組合連合会千早病院 内科), 春野 政虎(国家公務員共済組合連合会千早病院 放射線科)
抄録 はじめに:虚血性肝障害は循環不全などの肝虚血後に生じる肝機能障害であり,AST, ALTの上昇が特徴的である.虚血性肝障害は一過性であることが多く,また瀰漫性の肝細胞虚血のために特徴的な画像所見を示すことは稀である.われわれは肝性胸水後に肝偽小葉の壊死を超音波検査(US),断層撮影(CT)にて結節として捉えられた虚血性肝障害症例を経験した.肝性胸水に伴う低酸素血症による虚血性肝障害ならびに門脈血栓による門脈血流低下による虚血性肝障害から生じた肝偽小葉の壊死性結節を画像的,病理学的に捉えられた本症例は貴重と思われた.症例:91歳,女性.臨床経過:約10年前より非アルコール性脂肪肝より進展した肝硬変と診断され,近医で加療されていた.腹水の管理目的にて当科に紹介入院となった.血清アルブミンは3.0g/dlと低値で,画像上,多量の腹水を伴った肝硬変所見を認めた.ALTは9 IU/lと低値であった.利尿剤投与,腹水穿刺排液による治療を行なったが,入院第36病日に呼吸困難の出現ならびに酸素分圧の低下を来たした.胸部X線にて多量の右胸水を認め,肝性胸水と診断された.肝性胸水発症9日目の血液検査でASTが439 IU/l ,ALTが1196 IU/lと著明な上昇を呈し,超音波検査ならびに断層撮影では肝内に多発性の低輝度,低濃度結節,門脈血栓を認めた.肝性胸水発症19日目に肝不全・呼吸不全で死亡した.剖検:肝硬変,門脈血栓,右無気肺,右胸水,腹水を認めた.肝偽小葉は散在性に壊死に陥っており,US,CTで示された肝の多発性低輝度,低濃度結節に一致した.結語:肝偽小葉壊死は肝性胸水に伴う低酸素血症による肝虚血,門脈血栓を原因とした門脈流低下による肝虚血という両者の複合が原因と考えられた.
索引用語 虚血性肝炎, 偽小葉壊死